近年離婚は増加傾向にあり、その割合は約35%にも登っています。
最近では長年連れ添った夫婦が離婚してしまうことを示す熟年離婚という言葉も出てきました。
離婚はもはや他人の問題ではなく、誰にでも起こりうる身近な問題であると言えます。
そして、子供のいる夫婦にとって特別問題となるのが子供の養育費ではないでしょうか。
離婚後に養育費を支払っていた人が亡くなってしまった場合、養育費はどうなってしまうのでしょうか。
今回は2種類ある遺族年金の違いとその受給条件、そして実際の事例を見ていきたいと思います。
遺族年金についておさらい!2種類あるけど何が違う?
遺族年金とは、被保険者が死亡した時一定の条件を元にその遺族に支給される年金のことです。
遺族年金には2種類あり、遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。この2種類についてまずは説明していきます。
遺族基礎年金とは?
遺族基礎年金とは、国民年金に加入していた人が亡くなった場合に支給されます。
故人によって生計を維持されていた子供および配偶者に支給される年金です。
この時の子供は、18歳到達年度の末日を超えていないことが条件となります。
あくまでも所定の年齢を超えていない子供を持った配偶者に支給される年金ですので、子供のいない配偶者には支給されないことに注意が必要です。
また、子供がいても、子供が18歳到達年度の末日を過ぎてしまうと支給が打ち切られてしまいます。
後述する厚生年金と比べると、支給の制限が厳しいと言えます。
遺族厚生年金
遺族厚生年金は、主に会社員や公務員など、厚生年金加入者が死亡した時に遺族に支給される年金です。
厚生年金に加入していた場合は、遺族基礎年金に加えてこの遺族厚生年金も受けとることができます。
こちらの年金は子供だけでなく、亡くなった人に生活を支えてもらっていた配偶者や親族も受給対象となります。
厚生年金も基礎年金にも、受給には優先順位が定められており、順位の高い人が受給すると後の順位の人は受け取ることができないという仕組みになっています。
厚生年金の順位は以下のようになっています。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
たとえば配偶者が厚生年金を受給している間は、子も受給権を持っていますが支払いは停止されます。
もし遺族となった妻が再婚し、新たな夫の配偶者となれば厚生年金の受給権を失うので、受給権は次の順位である子に移ります。
遺族年金の受給条件は?離婚してももらえるの?
基本的には夫と離婚した時点で妻は夫と配偶関係を解消しているため、元夫が死亡しても遺族年金の受給権はありません。
しかし子供がいる場合は条件が複雑になりますので見ていきましょう。
遺族基礎年金の場合
一般的に遺族基礎年金の受給条件は以下のようになっています。
①故人の要件
次のいずれかの条件を満たしている必要があります。
- 国民年金の加入期間が25年以上
- 老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある場合
②遺族の要件
この場合の遺族とは、故人によって生計を維持されていた配偶者とその子供です。
- 18歳になる年度末の3月31日を経過していない
- 20歳未満で障害等級が1級または2級
- 元夫に生計を維持されていた
「生計維持関係」とは、生活費や養育費の経済的援助が行われていたかどうかです。
受給の際には、亡くなった元夫が子供を養育していたという証明が必要になります。
具体的には、元夫の口座から養育費の定期的な振込があったことがわかる通帳や領収書などです。
基本的に基礎年金の受給条件は厳しく、受け取れないことが多いと言えます。
遺族厚生年金の場合
①故人の要件
- 厚生年金保険の被保険者期間中の病気あるいは怪我が原因となり、初診日から5年以内に亡くなった場合
- 1級または2級の障害厚生年金を受け取っていた場合
- 老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある場合
②遺族の要件
厚生年金の被保険者であった故人によって生計を維持されていた
- 妻(ただし30歳未満で子がいない場合は、5年間の限定給付)
- 子、孫(ただし前述の遺族基礎年金と同じ条件)
- 55歳以上の夫、父母、祖父母
となります。
つまり、遺族基礎年金は子供だけが受給対象でしたが、遺族厚生年金は子供がいない配偶者も受給が可能です。
受給権利の範囲が広いため、年金の受け取りは基本的に厚生年金からになります。
いくつかの事例を紹介!
年金には2種類あり、条件によって基礎年金と厚生年金が支給されることがわかりました。
では具体的な事例とともに、年金の受け取りパターンについて見ていきましょう。
なお、以下に示すのは被保険者が国民年金と厚生年金両方に加入していた場合を想定していますので、もし被保険者が国民年金しか加入していなかった場合は厚生年金を受け取ることができないので注意してください。
遺族となった妻が子連れで再婚した場合
再婚する前は、妻は元夫の遺族とみなされ、さらに子供がいるため遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給できます。
先述したように受給には順位があるので、子は遺族厚生年金および遺族基礎年金共に受給権はありますが、優先順位が妻にあるため受給権は停止されています。
そして妻が子連れで再婚すると、妻は再婚相手の配偶者扱いとなりますので遺族厚生年金・基礎年金共に受給権を失います。
したがって遺族厚生年金・基礎年金共に受給権は子に移りますが、基礎年金に関しては子が母と生計を同一にしていた場合は支払いが停止されるため、遺族厚生年金のみを受け取ることになります。
子と母が生計が同一でない場合とは、たとえば子が祖父母等に引き取られたような場合を想定しています。
そうでない場合は、遺族基礎年金の受給権は子にありますが、実際の支払いは停止されます。そのような場合も遺族厚生年金はきちんと支払われます。
子供は妻が引き取り、元夫が再婚した場合
妻が子供を引き取り、元夫と再婚相手の間に子がいなかった場合です。
元夫が子供の養育費を支払っていた場合、元夫と子の間には生計維持関係があったとみなされ、子は遺族基礎年金の受給権があります。
しかし母親と子が同居している場合など、生計を同じくしていた(=元夫に生計を維持されていない)場合は、その間遺族基礎年金の支給が停止されます。
また、遺族厚生年金の支給は子が優先されるため、再婚相手よりも子に支給されます。
結局、子は遺族厚生年金のみを受け取ることになります。
ただし、遺族厚生年金及び基礎年金共に、子に受給権があるのは18歳到達年度末までのため、子が18歳到達年度末を迎えると受給権を失います。
その後は遺族厚生年金の受給権は後妻に移りますが、後妻は子がいないため遺族基礎年金は受け取ることができません。
子供は元妻が引き取り、元夫と再婚相手の間に子がいた場合
離婚した元夫が再婚し、再婚相手との間に子をもうけていた場合は、再婚相手が配偶者ということになりますので、遺族基礎年金・厚生年金共に後妻の方に受給権があります。
後妻との間に生まれた子よりも前に前妻との間に生まれた子が18歳到達年度末に到達するので、前妻との間に生まれた子には遺族年金が支給されることはありません。
大切な子供の養育費、慎重な選択を!
遺族年金には2種類あり、条件に応じて支給されることがわかりました。
亡くなった夫と子供との間に生計関係があったかどうかで年金を受け取れるかどうかが決まります。
離婚は決して簡単に決められることではありませんが、もし選択肢の一つにある場合は、子供の養育費のことも考えて、慎重な選択を心がけましょう。
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