障害者の平均年収はいくら?給料が低いって本当?雇用の実態は?

海に差し出す手

障害者雇用促進法が制定され、障害者雇用を促すための様々な取り組みが行われています。

これらの取り組みの中でも特に中心となるのが、事業主に対して障害のある人を一定の率以上で雇用するよう義務付けた障害者雇用率制度であり、現在の障害者の法定雇用率は2.2%となっています。

官民共に障害者の雇用率は年々上昇し続け、2021年4月には法定雇用率は2.3%まで引き上げられる予定です。

そんな障害者の雇用環境ですが、障害者の年収はどのくらいなのでしょうか。
障害者の雇用実態についても解説します。

障害者の平均年収はいくら?

障害者の平均年収はいくらなのでしょうか。順に解説していきます。

障害者の6割以上が年収100万円以下!

障害者団体「きょうされん」が発表した、2016年の地域生活実態調査によると、障害者の6割以上が年収100万円以下で生活していることがわかりました。

以下のグラフをご覧ください。

障害者年収

参考:きょうされん「障害のある人の地域生活実態調査の結果報告

日本全体の平均年収は2019年で約440万円となっており、障害を持つ方と比べると大きな差があることがわかります。

障害を持つ人の所得と生活の現状とは?

きょうされんの調査の結果、障害を持つ方のうち、相対性貧困とされる122万円の「貧困線」を下回る年収の人は、80%以上に及ぶことがわかりました。

この「貧困線」とは、厚生労働省の国民生活基礎調査で公表されているもので、前年の世帯収入から国民一人当たりの収入を算出し、その実質中央値の半分の数値が設定されています。

また、国税庁の平成26年民官給与実態統計調査の結果とも比較しても、いわゆるワーキングプア状態にある障害を持つ方は約98%という結果になっています。

生活保護の受給率は国民一般の6倍以上!

きょうされんの調査によると、生活保護を受給している人は1,677人となっており、有効回答者14,729人中11.4%という結果となっています。

一方、国民一般の生活保護を受けている人の割合は1.7%であり、障害のある人は国民一般と比べて受給率が6倍以上も高かったことがわかっています。

障害者の雇用制度とは?

障害者が雇用される際は、通常とは異なる手続きが行われます。

まずは障害者の雇用について、説明します。

障害者雇用促進法とは?

障害者雇用促進法は、障害者の職業の安定を図ることを目的としています。

障害者雇用促進法では、企業側が障害のある人に対して無理のない範囲で配慮を提供する義務があります。これを合理的配慮といいます。

合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と平等な機会を得られるように、一人ひとりの状況に応じて起こる妨げとなる事柄や困りごとを改善するために行う個別の対応や支援のことです。

障害者雇用は通常の雇用と何が違う?

障害者を雇用する際は、通常雇用とは別に、障害者雇用という方法があります。

障害者雇用とは、通常の雇用枠では障害のある人が不利になってしまう場合もあるため、事業主や自治体などが障害のある人だけの採用枠で障害のある人を採用することです。

障害者雇用の場合は、障害があるとわかった上で雇用されるため、障害の特性や体調などへの配慮を受けやすくなります。

障害者雇用制度とは、障害によって『配慮』が受けられます。

行われる『配慮』には、例えば以下のようなものがあります。

障害の種類合理的配慮の例
身体障害車椅子を使っている人が通勤ラッシュを避けられるよう、時差出勤を許可する
視覚障害のある人が作業しやすいよう、拡大読書器や音声読み上げソフトなどの支援機器を導入する。
知的障害作業の内容や手順を図などを使ってわかりやすく説明したマニュアルを作る
抽象的な表現を避け、簡潔で具体的な表現を使って説明する
精神疾患体調や通院、服薬の必要性に応じて、勤務時間や休憩時間、休暇などを調整する
障害の特性や体調などの情報をプライバシーに配慮しつつ職場に周知しておくことで、サポート体制を整えておく

障害者はなぜ収入が低いのか?

障害者の収入がなぜ低いのでしょうか。順に解説していきます。

なお、以下の数値は、厚生労働省の「平成30年度障害者雇用実態調査結果」を元にしており、障害によって「身体障害者」「知的障害者」「精神障害者」という区分で調査を行っています。

正規雇用率が少ない

雇用形態別に見ると、最も給料が高い「無期契約の正社員」は身体障害者で50%ですが、知的障害者、精神障害者になると全体の2〜30%まで落ち込みます。

「正社員以外」で働いているのは、知的障害者では全体の80%、精神障害者では全体の60%となっており、障害者全体での正規雇用率が少ないことがわかります。

正規雇用でないと、昇給制度がない他、原則ボーナスといった物もありませんので、その分の差も大きいことが考えられます。

また、勤続年数も、知的障害者で約7年、精神障害者で約3年と短い傾向にあり、そうすると昇給や時給アップの機会も障害のない人よりも限られてきます。

勤務時間が少ない

健常者ですと、週5日1日8時間労働の場合、週の労働時間は40時間となります。

障害者の雇用形態を見てみると、身体障害者では80%以上の方が「通常(週30時間以上)」で働いていますが、知的障害者、精神障害者の場合は「通常」で働く人は6~70%であり、その代わりに「20時間以上30時間未満」で働く方が30%となっています。

障害を持っているから、といった理由で働く時間を不当に削られることは法律違反となります。障害を持っている人の労働時間が短いのは、障害からくる制約によるものであると考えられます。

給料がアップしにくい

企業が障害者雇用として用意している仕事は、

  • 事務アシスタント(簡単な事務)
  • 清掃
  • 軽作業(工場での商品製造など)
  • 店舗バックヤード(商品補充など)
  • 障害者のための支援制度

といったように、比較的単純作業の仕事が多いです。

このような単純作業の仕事は、一般的に給与水準が低い傾向にあります。

このような障害者の労働の実態から、障害者の給与が安いのには理由があることがわかります。

障害者は健常者に比べて不当に給与が安いのではなく、障害者の働き方の特性から、どうしても職種が限られてきてしまう点や、働き方に制限があることから、給料が低くなっていることがわかります。

障害者の支援制度

次に、障害者が受け取ることのできる支援制度について紹介していきます。

障害年金

年金といえば、老後にもらえるもの、というイメージがありますが、何らかの形で障害を追ってしまった場合にも受け取ることができます。

障害年金とは、国民年金、厚生年金の加入者が障害状態になった場合に、申請をして所定の条件を満たせば受給できる年金です。

国民年金に加入している人は「障害基礎年金」、厚生年金に加入している方は「障害厚生年金」を受け取ることができます。

自立支援医療制度

国の制度としては、障害者自立支援法による自立支援医療制度があります。

精神疾患や、身体の障害の治療にかかる医療費の自己負担額を軽減する制度で、以下の3種類に分けられます。

  • 精神通院医療:精神疾患があるひとで、通院による継続的な治療を必要とする人
  • 更生医療:身体障害者手帳の交付を受けた18歳以上の人で、治療により確実に効果が期待できる人
  • 育成医療:身体障害のある18歳未満の人で、治療により確実に効果が期待できる人

自立支援医療制度を利用すると、通常3割負担の医療費が原則として1割負担に軽減されます。

条件や助成金額などは市町村によって異なります。自立支援医療および、市町村ごとの医療費助成については、各市町村の医療・福祉関係の部署に問い合わせる必要があります。

ハローワーク(障害者窓口)

ハローワークには総合窓口の他に、障害者専用窓口が用意されています。

障害者専用窓口では、ハローワークの相談員が障害者の希望に基づき、職業紹介をしてくれます。

他にも、障害者向けの求人の確保、障害者雇用を検討する企業側の相談、就職を目指すにあたり、適切な支援が必要な方には医療機関との連携も行っています。

障害者のキャリアアップ支援も大切!障害者支援サービス紹介

障害者の収入が低いのには、障害者の働き方の特性にあることがわかりました。

人は誰しも楽しく、自分らしく働きたい、という思いを持っていると思います。

障害者の雇用率も順調に上がって生きている今、これからの企業の課題は意欲ある障害者にたいして、適切なキャリアアップの機会を与えることだとも言えます。

障害の有無にかかわらず個人が尊重され、一人ひとりが個性や特性を生かして能力を発揮できる社会を願うばかりです。

最後に、就職・転職をめざす障害者の方、またそのご家族の方におすすめの障害者向けの就職・転職サービスdodaチャレンジを紹介します。

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