司法書士の年収を発表!独立開業と勤務はどれくらい稼げる?

司法書士 年収

最難関国家資格と言われる司法書士という職業をご存知でしょうか。

弁護士と同じく「法律のプロ」とされている司法書士ですが、実際に司法書士として働いたらどれくらいの収入がもらえるのか気になる方も多いのではないでしょうか?

この記事では、司法書士とは一体何をする職業なのか、平均年収はどれくらいなのか、そして司法書士資格を取るのはどれくらい難しいのかについて、徹底解説していきます!

司法書士ってどんな仕事?弁護士との違いは?

①:登記業務

司法書士の最も主要な仕事は登記業務です。

登記とは、土地や建物などの財産についての権利を公に示すために、「登記ファイル」という台帳に記録しておくことを指します。

登記業務は、「不動産登記」と「商業登記」の二つに分けられます。

不動産登記とは、土地や建物の情報(所有者、面積など)を公にするための登記です。これがあることで、土地や建物の所有者は、それらを所有していることを法的に証明することができます。

本来登記手続きはその土地や建物の所有者本人が行いますが、代理として司法書士が行うこともできるのです。

一方商業登記とは、会社の情報(会社名、従業員数、資本金など)を公にするための登記です。これがあることで、その会社が取引を行う際に、取引先が会社情報を知ることができます。そのため、会社の信頼性が保たれると同時に取引もスムーズに進めることができるのです。

②:成年後見人業務

二つ目に挙げられる司法書士の業務として、成年後見人業務があります。

成年後見人とは、認知症や知的障害などの理由で、身の回りの管理を1人で行うのが困難な人のために、代わりに管理を行う人のことです。

成年後見人になる人は、親族が望ましいとされていますが、専門的な知識を持った司法書士に頼むこともできます。

司法書士以外にも、弁護士や行政書士なども成年後見人としての役割を果たしています。

③:訴訟代理業務

法務大臣の認定を受けた司法書士は、訴訟代理業務を行うことができます。

訴訟とは、裁判によって争いを解決する手続きのことです。

争われる金額が140万円を超えない裁判に限り、司法書士が訴訟の手続きを代理したり、相談に乗ることができるのです。

④:その他の業務

上記でご紹介した業務以外にも、司法書士には様々な業務があります。

例えば、裁判所への提出書類の作成もその一つです。金銭トラブルや職場でのトラブルなど、日常生活で起こった色々なトラブルについて、弁護士を介さずに裁判を行う場合、司法書士が提出書類の作成を行うことがあります。

他にも、相続に関する様々な手続きを代わりに行ったり、アドバイスをする相続関連業務というものもあります。

弁護士との違いは業務内容の広さ

「司法」書士という名前がついている通り、司法書士は法律のプロであるということはお分かりいただけたと思います。

では、同じく法律のプロである弁護士との違いは何でしょうか?

ずばり、業務内容の広さに違いがあります。

司法書士は法律のプロとはいえ、登記を専門としています。そのため、先ほどお話しした通り、訴訟を代理することができるのは請求額が140万円以下の裁判に限られています。

それに対し弁護士は、請求額に限界なく、あらゆる法律業務に対応することができます。

このように司法書士と弁護士では、仕事内容の幅に大きな違いがあるのです。

司法書士の平均年収は約945万円!

司法書士 年収

厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、司法書士を含む「法務従事者」の平均年収は945.4万円(平均年齢43.9歳)となっています。

一方、日本司法書士会連合会の「司法書士白書2021年度版」では、働き方別に収入調査が行われています。それぞれの働き方と収入については、以下の「働き方によって年収は異なる!」の章をご覧ください。

ここからは、そのような司法書士の年収を項目別に見ていきます。

【年代別】司法書士の平均年収

まず、司法書士の年代別の平均年収は以下の通りです。

20~24歳約272万円
25~29歳約654万円
30~34歳約757万円
35~39歳約887万円
40~44歳約948万円
45~49歳約925万円
50~54歳約1136万円
55~59歳約949万円
60~64歳約1403万円
65~69歳約554万円
70歳~約120万円

出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」

30代後半から徐々に上がり始め、50代から60代にかけて年収のピークを迎えています。

【都道府県別】司法書士の平均年収

次に、都道府県別の司法書士の平均年収は以下の通りです。

データの無いものについては「-」で表しています。

全国954.4万円
北海道579.9万円
青森県
岩手県
宮城県393.6万円
秋田県
山形県
福島県
茨城県
栃木県
群馬県756.0万円
埼玉県550.7万円
千葉県688.9万円
東京都1,069.9万円
神奈川県728.9万円
新潟県391.5万円
富山県
石川県
福井県604.9万円
山梨県
長野県406.5万円
岐阜県
静岡県
愛知県836.1万円
三重県1,000.2万円
滋賀県628.2万円
京都府606.0万円
大阪府788.8万円
兵庫県462.5万円
奈良県390.1万円
和歌山県
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県640.0万円
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
福岡県600.0万円
佐賀県370.7万円
長崎県
熊本県
大分県816.4万円
宮崎県
鹿児島県348.2万円
沖縄県645.6万円

出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」

【経験年数別】司法書士の平均年収

0年~1~4年5~9年10~14年15年以上
約693万円約848万円約873万円約844万円約1081万円

出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」

経験年数が上がるにつれて年収は増えているものの、比較的緩やかと言えます。

【企業規模別】司法書士の平均年収

10~99人100~999人1000人~
約809万円約984万円約697万円

出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」

企業規模別の平均年収は、少し不思議な結果となりました。

このデータを見ると、100~999人規模の企業における司法書士の平均年収が最も大きくなっています。

【パート・アルバイト】司法書士の平均年収

司法書士は、正規雇用以外にもパートやアルバイトとして働くこともできます。

厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、パートやアルバイトとして働いている司法書士(企業規模計)の平均時給は3882円となっています。

1日あたりの労働時間は平均6時間、1ヶ月あたりの労働日数は平均9.3日なので、平均年収を計算すると、

3882円×6時間×9.3日×12ヶ月+298300円(ボーナス)
=289万7687円

になります。

国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、一般的なパートやアルバイトなどの非正規雇用者の平均年収は176万円となっています。そのため、司法書士資格を持っていると一般的な非正規雇用者の年収より100万円以上多くもらえることになります。

ただし、賃金構造基本統計調査では、弁護士や弁理士も含めた「法務従事者」としての時給が掲載されているため、正確な司法書士の時給とは言えません。

そこで、求人サイト「求人ボックス」を参照してみると、パート・アルバイトの司法書士の平均時給(関東)は1068円となっていました。今度はこの値を使って年収を計算してみると、以下のようになります。

1日8時間、週3勤務と仮定すると、

1068円×8時間×12日×12ヶ月
=123万円336円

参考:求人ボックス「司法書士の仕事の年収・時給・給料

となり、今度は一般的な非正規雇用者の平均年収176万円を下回る値となりました。

働く地方や経験年数によって時給は大きく変わりますが、一般的なアルバイト・パートの司法書士の年収は100〜200万円台と言えます。

司法書士の生涯年収

年代別の平均年収から司法書士の生涯年収を単純計算すると、以下のようになりました。

272万円×2年+(654万円+757万円+887万円+948万円+925万円+1136万円+949万円)×5年+1403万円×1年

=3億3317万円

(大学卒業後23歳〜60歳までを就業期間として算出)

上記でご紹介した平均年収は、全て弁護士や弁理士などの平均年収も含まれているため、平均年収や生涯年収の値が本来の司法書士の値よりも大きく出ている可能性があります。

他資格との年収比較

司法書士の平均年収を、その他の資格職の年収と比較してみました。

弁護士1191万円
(全国平均)
弁理士945万円
公認会計士・税理士658万円
司法書士独立開業:1000-4999万円
勤務:300-400万円
行政書士584万円
中小企業診断士500~800万円
社会保険労務士486万円

出典:弁理士・公認会計士・税理士・行政書士→厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」、社会保険労務士→厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査」、弁護士→日本弁護士連合会の「弁護士白書」、司法書士→日本司法書士会連合会の「司法書士白書2021年度版」、中小企業診断士→中小企業診断協会の「中小企業診断士活動状況アンケート調査

司法書士の年収は、働き方によっては一般的なサラリーマンと変わりませんが、多いと弁護士の年収にまで並ぶこともあり、非常に年収幅の広い職業であると言えます。

参照データの集計方法や回答数は様々であるため、上記はあくまで目安としてご覧ください。

独立開業と勤務司法書士の年収はそれぞれどれくらい?

最初にお伝えしたように、司法書士の働き方にはいくつか種類があります。そして、それぞれの働き方によって収入も大きく変わってくるのです。

日本司法書士会連合会の「司法書士白書2021年度版」によると、「経営者司法書士である」と答えた人は80.4%、「経営者司法書士ではない」と答えた人は19.6%という結果になっています。

経営者司法書士ではないと答えた人の中には、勤務司法書士・企業内司法書士などが含まれていると考えられており、このことからも司法書士としての働き方の選択肢が増えているということが分かります。

開業司法書士

開業司法書士とは、独立して自分の事務所を立ち上げて働く司法書士のことです。

日本司法書士会連合会の「司法書士白書2021年度版」によると、経営者司法書士とそれ以外の司法書士(勤務司法書士や企業内司法書士など)を合わせた令和元年分の収入は、全回答数2557のうち1000〜4999万円が最も多く(回答数894)、平均では1683.5万円となっています

次に多いのが200〜499万円、そして500〜749万円と続いています。

この「経営者司法書士」というのが開業司法書士を指していると考えられます。

様々な働き方を総合したデータであるため開業司法書士の正確な年収とは言えませんが、全体の約4割が年収1000万円以上であることから、比較的高水準の収入を得ていることが分かります。

勤務司法書士

勤務司法書士とは、司法書士事務所や司法書士法人に勤務する形で働く司法書士のことを指します。

日本司法書士会連合会の「司法書士白書2021年度版」によると、経営者司法書士以外の司法書士の年収(平成31年1月1日〜令和元年12月31日)は、全回答数624のうち300〜400万円未満(回答数131)が最も多い結果となっています。

次に多いのが400〜500万円未満、そして500〜600万円未満と続いています。

国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」より、日本の平均年収は433万円なので、一般的なサラリーマンの年収と大差ないと言えるでしょう。

司法書士になるためには国家試験に合格する必要がある!

司法書士になるためには、まず国家試験である司法書士試験に合格しなければなりません。

その後、日本司法書士会連合会の司法書士名簿に登録し司法書士会に入会することで、晴れて司法書士になることができます。

司法書士試験は、答案を紙に書いて回答する筆記試験と口頭で出された問題に口頭で答える口述試験の二つに分かれており、合格するためにはこれら両方を突破する必要があります。

以下では、司法書士試験の受験資格や試験科目、試験の時期などを、筆記試験と口述試験に分けてご紹介していきます。

司法書士試験の受験資格・受験料

受験資格と受験料

受験資格筆記試験申し込めば誰でも受験可能
口述試験筆記試験合格者
受験料8000円

出典:法務省「司法書士試験」

司法書士試験の筆記試験について

まず筆記試験について解説していきます。

試験科目・試験形式

試験は午前と午後に分かれています。試験科目・試験形式は以下の通りです。

午前の部(9:30-11:30)

  • 憲法
  • 民放
  • 商法(会社法その他の商法分野に関する法令を含む)
  • 刑法

午後の部(13:00-16:00)

  • 不動産登記法【記述1問あり】
  • 商業(法人)登記法【記述1問あり】
  • 供託法
  • 民事訴訟法
  • 民事執行法
  • 民事保全法
  • 司法書士法

出典:法務省「司法書士試験」

出題形式は、午後の部の不動産登記法と商業登記法のみ記述式、それ以外は全て択一式となっています。

【筆記試験】出題数と配点

出題数配点
午前の部
多岐択一式
35問105点
午後の部
多岐択一式
35問105点
午後の部
記述式
2問70点

出典:法務省「司法書士試験」

司法書士試験の口述試験について

次に、口述試験についてです。

口述試験は、筆記試験に合格した人のみ受験できる点に注意が必要です。

口述試験の概要は以下の通りです。

日時・会場口述試験受験票に記載
試験科目筆記試験と同様(ただし、例年は不動産登記法・商業登記法・司法書士法の3科目からしか出題されていません。)
試験時間1人15分程度

出典:法務省「司法書士試験」

司法書士試験の合格率は3~5%台!

実施年度合格率(%)受験者数(人)合格者数(人)
令和3年度約5.111,925613
令和2年度約5.111,494595
平成31年度約4.313,683601
平成30年度約4.314,387621
平成29年度約4.015,440629
平成28年度約3.916,725660

出典:法務省「司法書士試験」

実施年度によって多少の差はあるものの、合格率は3~5%に落ち着いており、弁護士や公認会計士にも並ぶ最難関の国家資格と言えるでしょう。

上記でご紹介した司法書士試験の試験内容や受験料等は変更になる可能性があります。受験予定の方は法務省の「司法書士試験」というサイトを逐次チェックするようにしてください。

まとめ

いかがだったでしょうか?

司法書士の他にも、様々な資格職業の年収をご紹介しているので、気になる方は下のリンクから是非チェックしてみてください!

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