安倍政権が積極的に進める働き方改革ですが、具体的には何の法律が改正されるのか、何がどのように変わるのかわかっていない方も多いと思います。
現在、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」は、厚労省のデータ改竄が発覚し差し戻された裁量労働制を除いた状態で衆議院を通過、現在参議院での審議に差し掛かろうとしています。
このまま審議が進んでいくと、どの程度になるかはわかりませんが部分的にも改正されるのは確実です。
そこで本日は改正される8つの法律の現在の意味やどのように改正されるのかなどを見ていきましょう!
働き方改革三本の柱と8つの法律とは?
働き方改革は三本の柱で構成されていますがこの記事では第1・2の柱とそれにかかわる法改正について見ていきましょう!
第1の柱:働き方改革の総合的かつ継続的な推進
第2の柱:長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等
- 時間外労働の上限規制の導入
- 長時間労働抑制策・年次有給休暇取得促進策
- フレックスタイム制の見直し
- 企画型裁量労働制の対象業務の追加
- 高度プロフェッショナル制度の創設
- 勤務間インターバル制度の普及促進
- 産業医・産業保健機能の強化
第3の柱:雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
- 不合理な待遇差を解消するための規定
パートタイム労働法・労働契約法改正へ
- 派遣先との均等・均衡待遇方式か労使協定方式かを選択
労働者派遣法の改正へ
- 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
- 行政による履行確保措置と裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備
それでは各法律を見ていきましょう!
8つの法律 意義や現状をチェック!
雇用対策法
雇用対策法は国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、雇用に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働力の需給が質量両面にわたり均衡することを促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的としています。
改正案では法律名を、職業の安定及び職業生活の充実等、労働施策の総合的な推進に対応するものとするなど、基本方針の策定が新設されるなど現在よりも総合的な内容になるようです。
この法律では、具体的な内容よりは労働政策を行うにあたっての指針が定められているので、直接的に生活に影響することはなさそうです。
しかし、この改正で変更された部分が今後の労働法の制定や労働環境の整備に大いに関わってくると見込まれるので、注意が必要です。
労働基準法
労働基準法は日本の労働基準、つまり労働の最低条件を定めている法律です。
労働組合法、労働関係調整法と合わせて労働三法と呼ばれる重要度の高い法律で、あとで述べる労働安全衛生法も労働基準法から分離し制定されました。
様々な改正箇所があるのですが、着目すべきは
労働基準法(昭和22年法律第49号)(抄)(時間外、休日及び深夜の割増賃金)第37条 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。2~5 (略)
で定められる割増賃金で、この改正で中小企業の60時間を超える分の割増賃金率が25%から50%に引き上げられます。
厚生労働省より
また年次有給休暇の取り方も、労働者から取りたい日を言い出すのではなく、事業者が取りたい日をヒアリングして、とる日を事業者側が指定するようにすることで年次有給休暇が取りにくく、消化率が低いという問題を解決しようとしています。
また国会で大いに議論が紛糾した裁量労働制と高度プロフェッショナル制度の創設もここに含まれています。詳細は特設ページにて扱っていますのでそちらをご覧ください。
高度プロフェッショナル制度の対象職種や目的・メリット!
労働時間等設定改善法改正
(目的)
第一条 この法律は、我が国における労働時間等の現状及び動向にかんがみ、労働時間等設定改善指針を策定するとともに、事業主等による労働時間等の設定の改善に向けた自主的な努力を促進するための特別の措置を講ずることにより、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、もって労働者の健康で充実した生活の実現と国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
(定義)第一条の二 この法律において「労働時間等」とは、労働時間、休日及び年次有給休暇(労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第三十九条の規定による年次有給休暇として与えられるものをいう。以下同じ。)その他の休暇をいう。2 この法律において「労働時間等の設定」とは、労働時間、休日数、年次有給休暇を与える時季その他の労働時間等に関する事項を定めることをいう。
この法律は労働時間について、長時間労働を防止する努力を行う旨などが記されています。
ここの一部改正では、
第一条の二第二項中「時季」の下に「、深夜業の回数、終業から始業までの時間」を加える。
第二条第一項中「時刻の設定」の下に「、健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定」を加える。
ことになっています。これによって過労防止のためのインターバルを定める必要ができmさう。
労働安全衛生法・じん肺法
この二つは両方とも労働者の安全と健康に関することを規定しています。目的を見てみると
労働安全衛生法
(目的)第一条 この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。じん肺法(目的)第一条 この法律は、じん肺に関し、適正な予防及び健康管理その他必要な措置を講ずることにより、労働者の健康の保持その他福祉の増進に寄与することを目的とする。
①は産業医の機能強化が目的として行われ、医師が労働者の健康診断を行い、労働が原因で結果が良くない場合は事業者に事業者に対して必要な勧告を行う権限が与えられています。それが今回の改正で拡大され、現在は事業者はこの勧告を「尊重しなければならない」に過ぎないものを、法改正後は、この勧告を受けた事業者は「尊重する」のは当然のこと、勧告の内容その他厚生労働省令で定める事項を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告する義務が新しく設けられます。
②省令で定める時間を超えて労働する労働者に対して事業者は、医師の面接指導を行うことが義務づけられます。
申出の有無にかかわらず条件を満たす限り行うことは事業者の義務であり、行わなかった場合は罰則の対象となります。
省令と条件はまだ明確には定まっていませんが、現在より労働者の健康を守る法に改正されそうです。
③は現在は労働安全衛生法の基づく措置の実施に関し、事業者は労働者の心身の状態に関する情報を収集・保管することとなっています。
しかし、この改正で、情報の収集等に関し制限が設けられ、「労働者の健康の確保に必要な範囲内で労働者の心身の状態に関する情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない」とされます。
ただし、本人の同意がある場合、その他正当な事由がある場合はこの限りではありません。
第三の柱と改正案は後半へ
いかがだったでしょうか?「働き方改革」といっても非常に多くの要素、法改正で構成されていることが理解できたかと思います。
やはり法律は難解で、読むのに時間も苦労もかかりますが、今後大きな影響を持つものになってくると思いますので、参議院を通過する前に一回ぐらいは目を通しておきたいですね。
一回ですべてを見ていくのは情報量が多く、頭に入ってこないと思いますので、残りは後半で見ていきましょう!
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