個人年金保険は本当に必要?老後の備えに役立つ?

日々働いてふと不安になる老後のこと。「今」だけ見てると、老後破綻という恐ろしい結末になってしまうかもしれません。

そこまでいかないにしても、ぎりぎりの生活をしながら日々暮らすというのは誰でも嫌だと思います。

仕事が終わって時間ができたからこそ、今までできなかった旅行や趣味を思う存分楽しみたいですよね?

そのためにはやはりある程度のお金が必要なことも事実です。そのような老後資金を作る方法はいくつかありますが、今回は「個人年金保険」というものを紹介します。

名前ぐらいは聞いたことあるかもしれませんが、個人年金保険にはメリットとデメリットがあります。その個人年金保険は実際必要なのか、老後の生活資金をカバーしてくれるのかということを解説していきます。

POINT!

  • 個人年金保険の概要・平均受給額・メリット・デメリットを解説!
  • 老後に必要な生活費と公的年金の支給額を確認!
  • そのほかの老後資金の作り方を紹介!

個人年金保険とは?

個人年金保険とは、生命保険の1種で、国民年金や厚生年金などの公的な年金とは違い、民間の保険会社と個人で契約するというものです。

お金を毎月積み立てて、契約時に決めた年齢になったら受け取るという形で、一定期間受け取れるものと、一生涯受け取れるものの2種類があります。

公的な年金の先行きが不透明になってきている中で、老後の生活費を自分で確保していくことの重要性が叫ばれています。

そういう不安に対する一つの答えとして個人年金保険は注目されています。

個人年金保険はいくらもらえる?保険料はいくら?

「生命保険文化センター平成27年度生命保険に関する全国実態調査」によると、個人年金保険の平均支給額は101万円ほどで、月額換算すると約84,167円でした。

ただ、個人年金は個人によって差が大きく、年間36万円未満から84万円までで、全体の半分を占めていることから、一部の人の額が高額で、全体の平均を引き上げているものとみられています。

実際、世帯年収200万円~300万円未満の世帯の、個人年金保険の年間受取額は82万円です。

それに対し、年収1000万円以上の世帯の、個人年金保険の年間受取額は136万円でした。

なので、平均的な年収の世帯は、年間90万円ぐらいと考えておいた方がいいですね。

また、個人年金保険の保険料は、全国平均で14,942円/月でした。

個人年金保険は、あまり高額な保険料を納めるタイプの保険ではなく、年収1000万円の世帯でも、多くて毎月2000円前後しか納めていません。

そういう意味でも、個人年金保険は気軽に老後資金を作る方法だといえますね。

個人年金保険のメリット

メリット①普通預金より金利が良い

日本人は世界的な平均と比べて、資産を預金している割合が高いといわれています。

しかし、金利が高い時代は終わり、現在の金利は相当低いラインまで落ち込んでしまっています。

個人年金保険は、定期預金として銀行に預けておくよりも、金利が高いケースが多く、商品や運用次第ではありますが、さらに年金の額を増やすことも可能です。

お金を増やしたいけど、高いリスクは負いたくないという人には、ぴったりな老後資産の確保術だといえます。

メリット②所得控除を受けることができる

個人年金保険に加入して、毎月保険料を払うことで、所得控除を受けることができます。

控除の項目は「個人年金保険料控除」。

会社員の方は年末調整の時、個人事業主やフリーランスの方は確定申告の時に、「個人年金保険料控除証明書」を提出することにより、控除が受けられます。

場合によっては税金の還付が受けられますので、個人年金保険は老後資金の確保と、節税を同時に行うことのできる手段であるといえますね。

メリット③夫婦で加入することにより、リスク分散

夫婦で個人年金保険に加入すると(夫婦年金)、どちらか片方が先に亡くなってしまった場合でも、保険料を支払い続けることが出来ます。

また、年金受給中についても同様、片方が亡くなってしまっても、残された方が年金を受給し続けることができます。

メリット④貯金代わりになる

補足的なことですが、個人年金保険は老後資金の貯金代わりになります。

普通の預金では、途中で解約したり、引き出したりして、ついつい使いがちです。

それに対して、個人年金保険は途中で解約することは可能ですが、途中で解約すると元本割れする恐れがあるので、簡単には引き出しづらいです。

お金の管理にあまり自身がないという人は、個人年金保険にお金を入れてしまって、半強制的に触らないようにするのも、一つの手ですね。

個人年金保険のデメリット

デメリット①解約すると元本割れのリスクがある

先ほども述べましたが、途中で解約すると、元本割れする恐れがあります。

契約内容次第ですが、10年以下の解約だと、基本的に元本割れします。

何事もなければいいですが、不慮の出来事によりお金が必要になった時などは、お金の自由度の面から不利であるといえます。

デメリット②インフレに弱い

保険料で運用する変額年金以外の個人年金保険は、インフレに弱いです。

インフレによってお金の価値が下落した場合、受け取る額は変わらなくても、受け取るお金の価値は下がっていまい、実質的には受取額が減少します。

突然激しいインフレが起こることはあまりありませんが、個人年金保険は長い間お金を預けておくものなので、少しづつインフレが起こる可能性は否定できません。

デメリット③保険会社が倒産すると年金が減額

個人年金保険は長期間お金を保険会社に預けておくものです。その間の景気変動などで保険会社が倒産した場合は、保険金が大きく減額される可能性が高いです。

実際に2008年、大和生命が破綻したときには、最大で80%保険金が減額されました。

生命保険会社が倒産することはなかなかありませんが、リスクが0ではないことは、あらかじめ知っておきましょう。

デメリット④受け取り時に課税される

個人年金保険が満期となり、年金として受け取るときには、その利益に課税されます。

利益というのは受取額から預けた掛金を引いたもので、その利益は「所得」という扱いになります。

また、個人年金の利益は、健康保険や介護保険の対象となる所得ですので、利益が多いと、健康保険料と介護保険料が上がります。

利益をもらうことは、一概にいいことばかりとは言えないようですね。

老後に必要な生活費はいくら?公的年金でもらえる金額は?

では、老後に必要な生活費と、国民年金や厚生年金といった公的年金はいくらぐらいもらえるのでしょうか。

老後の平均生活費

平成28年の総務省「家計調査」によると、世帯主が60歳以上の無職世帯の1か月の支出は以下のようになっています。

項目
食費68,193円
住居費14,346円
水道光熱費20,427円
家具・家事用品9,290円
被服等6,737円
保健医療費14,646円
交通・通信費26,505円
教育・教養娯楽費25,712円
こづかい6,225円
交際費25,243円
その他支出22,280円
合計239,604円

平均の生活費は、月々24万円ほどとなりました。また、平成28年度の生命保険文化センターの調査によると、最低日常生活費は22万円ほどで、あまり老後の生活に余裕がない世帯が多いことがわかります。

同じく生命保険文化センターの調査によると、ゆとりある暮らしをしたいのなら、月々35万円ほどは必要だそうです。

老後の生活を旅行や趣味などで充実させたいのなら、月30万円は確保できた方がよさそうです。

公的年金の平均受給額

また、平成28年の厚生労働局年金局による調査によると、国民年金と厚生年金の平均的な支給額は以下のようになりました。

  • 国民年金:約5.5万円/月
  • 厚生年金:約14.8万円/月

また、厚生年金の額は男性と女性でかなり差があります。男性の平均は20万円弱、女性の平均は10万円弱と言われています。

ただ、女性は結婚や出産で会社を辞めるケースがあるので、女性の厚生年金額は実際にはもっと少ない人が多いです。

つまり、多くの世帯では、老後の生活を年金だけでは賄えないという現状があるということですね。

退職金の平均受給額

では、退職金は平均いくらぐらいもらえるのでしょうか。

厚生労働省が行った平成25年度の就労状況総合調査の概況によると、定年退職者の平均退職金の額は以下の通りです。

  • 大学卒(管理・事務・技術職):1,941万円
  • 高校卒(管理・事務・技術職) :1,673万円
  • 高校卒(現業職)       :1,128万円

退職してから20年間生きるとして、大卒の人が1年間に使える退職金の額は、100万円弱です。

ここまできてようやくゆとりある生活が見えてきたといったところでしょうか。ただ、大卒の平均でこの数字なので、まだまだ多くの人が厳しい老後生活を強いられるといえそうです。

政府は、70歳以上の納付義務を検討中

さらに、政府は厚生年金加入を、70歳以上にも義務付けることを検討しています。

厚生労働省によると、加入義務が発生するのは一定額以上の収入がある70歳以上の高齢者で、その人たちは現役世代と同じように保険料を支払わなければいけないということです。

ただ、これは悪いことばかりではなく、70歳以上も厚生年金保険料の納付期間が長くなるため、受給できる年金額は増えます。

健康寿命が延びて、まだまだ働ける高齢者は増えています。実際に総務省の2018年労働力調査によると、70~74歳の役員を除いた雇用者は129万人いて、75歳以上も53万人います。

ただ、一方で保険料を納める基準となる「一定額」の額によっては、それを超えないために労働時間を抑制する人も出てくるでしょう。

そういった、改正による労働力の減少も、検討すべき課題であるといえます。

個人年金保険以外の老後貯蓄方法

では、個人年金保険以外で、老後資金を貯める方法は何があるのでしょうか?

①投資信託

投資信託は消費者から集めたお金を専門家が運用し、その利益を分配する、という金融商品です。

普段は仕事が忙しいという方でも、投資信託なら専門家に任せることができるので、投資の知識が場くても問題ありません。

また、投資と聞くと、多額の元手が必要と思う方がいるかもしれませんが、そんなことは無いです。投資信託は1万円、安いところだと1000円から始めることができ、誰でも気軽にできる金融商品として人気です。

ただ、あくまでも利益は運用次第ですので、運用次第では元本割れする可能性があることも覚えておきましょう。

②iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoとは、自分が預けた掛金を自分で運用し、60歳以降にその資産を受け取るというもので、投資の知識がある人にお勧めな制度です。

自分で運用するなら、自分で勝手に運用すればいいじゃん、と考える方もいるでしょうが、iDeCoの最大のメリットは、節税効果があるということです。

iDeCoで毎月積み立てた掛金は全額控除され、所得税や住民税が安くなります。

例えば、年収500万円の会社員が毎月2万円をiDeCoで積み立てると、年間で5万円近くも節税することが可能です。

また。iDeCoの運用中に出た利益には、税金がかからないというメリットもあります。

通常の運用だと、約20%の税金がかかるのに対し、iDeCoで出た利益には税金がかかりません。どうせ運用するなら税金がかからないほうがいですよね。

③財形貯蓄

財形貯蓄とは、会社が毎月の給料のうち一定額を天引きし、金融機関に送金するというもので、会社がこの制度に加入していないと利用できません。

財形貯蓄のメリットとして挙げられるのが、「財形住宅融資」という制度を利用できるということです。

いくつかの条件を満たすと、住宅を購入する際に住宅金融支援機構から低金利で融資を受けることが出来ます。

また、財形貯蓄にはいくつか種類がありますが、中には金利全額が非課税になるものもあります。

④NISA

NISAとは、年間120万円以下の投資で得た利益が非課税となる制度で、金融機関でNISA口座を開設することにより利用できます

NISAの非課税期間は5年間です。つまり、2019年にNISA口座で株を買ったとすると、2023年まではその株で出た利益が非課税となるということです。

一つ注意なのが、NISAの期限は2023年までです。NISAを始めたいのなら、2023年の12月までに口座を開設し、投資をしましょう。

⑤小規模企業共済

小規模企業共済は自営業やフリーランスの方にお勧めな制度と言えます。

厚生年金がある会社員とは違い、個人事業主は老後資金を年金に頼ることはできません。もちろん国民年金はありますが、生活できるほどの額はもらえないのが現状です。

小規模企業共済はそんな人たち向けの制度で、わかりやすく言うと、自分で自分の退職金を作る制度です。

通常の積み立て方法と大きく違うところは、掛金が全額所得控除の対象になるということで、自分の退職金を作りながら、毎年節税もできるということが、小規模企業共済の大きなメリットです。

個人年金は、気軽に老後資金を作る方法と言えることがわかりました。ただ、個人年金は個人差が大きく、一概に老後資金をカバーしきれるかどうかはわかりません。

ですので、個人年金に限らず、様々な方法を検討しましょう。

公的年金の先行きが不透明な昨今、自分で老後資金を作る重要性は増しています。お金の自由度がある今のうちに、自分に合った方法で、将来ののために老後資金を作っておくことを強くお勧めします。

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