2019年の12月20日に、政府は2020年度の税制改正大綱を閣議決定しました。
今回の改正の大きなポイントは「個人による資産運用」の分野に関して、かなり大きなウエイトをしており、主婦やサラリーマンなどの個人で投資を行う人々に向けて大きな影響を持つものとなっています。
2019年は副業元年・老後2000万円問題などのトピックが上がるなど、何かと会社に依存しない自力での資産形成というものにフォーカスされた年でもありましたね。
こうした2019年を受けて、政府としても個人による投資行動へ何かしらの税制面での対応を変えてきたということになります。
そこで今回は、先月発表された2020年度の税制改正大綱の変更点や概要を詳しく解説していくとともに、今回の変更によって損する人や得する人はどんな人なのかを分かりやすく解説していきます!
2020年の税制改正のポイントは!?iDeCoやNISAはどのように変わる!?
最近では会社員や主婦の方の多くが投資デビューしたり、投資を始めるために本記事のようなサイトを閲覧して勉強をなさっているケースが増えてきましたね。
そんな方々の多くは、iDeCo(個人型確定拠出年金)だったり、NISAA(少額投資非課税制度)という単語を耳にしたり目にしたりしている方も多くいらっしゃるかと思います。
今回の税制改正ではこれらの個人向けの資産形成手法に関する制度変更がなされたので、それぞれメインとなる変更点をいくつかご紹介していきます!
NISAA(少額投資非課税制度)への変更点やポイント
まずはNISAについて見ていきましょう。
そもそもNISAというのは、従来の仕組みですと一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの3つの種類が改正前の段階では設けられていました。
今回の改正においては、そのうちの一つであるジュニアNISAが2023年をもって廃止になる、ということが明言されました。
これが第一の改正のポイントとなります!
廃止の理由としては、他の2つのNISAに比べると利用者数が伸び悩んでおり、加入者が18歳になるまで引き出すことができないという不便さも挙げられたことから、今回の廃止決定に至ったようです。
2つ目の変更は、2023年以降も廃止されることなく継続される、一般NISA・つみたてNISAの期間が5年間延長されるというものです。
金融庁からの要望では期間の廃止と制度の無期限化が提言されていたものの、5年間という期限つきでの延長が決定しています。
また、3つ目の変更点としては一般NISAにおける2階建ての新制度の設立も発表されています。
今後の一般NISAでは、1階部分の非課税枠を 20 万円/年、2階部分を 102 万円 /年とし、1階部分はつみたて NISA の対象となっている投資商品に対象を限定されるということになります。
一般 NISAの中にも、つみたてNISAの要件を組み込むことで、手数料の低さや分散投資の度合い等の基準で金融庁が認めたインデックス投信が該当するつみたて NISAの対象商品を含めたポートフォリオを構成することにより、より長期的に安定的な金融商品による資産形成を制度面から推進していくことが目的とされていますね。
以上のNISAに関する変更点をわかりやすく表にまとめてみました!
現行の制度との違いをしっかりと押さえておきましょう!
現行 | 改正後 | |
一般NISA | 2023年まで | 2028年までに延長 |
つみたてNISA | 2037年まで | 2042年までに延長 |
ジュニアNISA | 2023年まで | 2023年で廃止 |
iDeCo(個人型確定拠出年金)などの私的年金制度への変更点やポイント
続いて、iDeCo(個人型確定拠出年金)などの私的年金制度への影響を見ていきましょう!
こうした私的年金制度全般に言えることは、加入可能な年齢や受給開始年齢の選択が可能になるなど、制度の柔軟化が行われたということです。
高齢者による再就職制度の充足であったり、雇用期間の延長などの制度設計に伴い、企業としてもそうした人材に対して確定拠出年金、確定給付企業年金を適用するべく、今回のような加入要件の緩和が実現しました。
主な私的年金制度の現行状況と変更内容は以下のようになっています。
現行 | 改正後 | |
加入者の年齢要件の柔軟化 (企業型 DC) | 厚生年金被保険者のうち 65 歳未満 | 厚生年金被保険者(70 歳未満) |
加入者の年齢要件の柔軟化 (個人型 DC:iDeco) | 国民年金被保険者のうち 60 歳未満 | 国民年金被保険者 (任意加入を含む、65 歳未満) |
受給開始年齢の柔軟化 (企業型・個人型 DC) | 60 歳から 70 歳の間で個人が選択 6 | 60 歳から 75 歳の間で個人が選択 |
支給開始年齢の柔軟化 (DB) | 60 歳から 65 歳の間で企業が設定可 | 60 歳から 70 歳の間で企業が設定 可 |
事業規模要件の緩和 (簡易型 DC 等) | 従業員規模 100 人以下 | 従業員規模 300 人以下 |
企業型と個人型の 併用要件緩和 | 労使合意に基づく規約がなければ、 企業型DC加入者は iDeco に加入不 可 | 本人希望で可能に |
※DC:確定拠出年金、DB:確定給付企業年金
あなたはどっち!?今回の改正で損する人と得する人の特徴とは!?
物事には見方によってはポジティブな面とネガティブな面がありますね。
今回の税制改正もある人にとっては良いことではあるものの、他の人にとってはあまり嬉しいものではないかもしれません。
そこでここからは、今回の税制改正によって発生したメリットとデメリットを簡単にまとめていきます!
税制改正によって得する人
まず、大きくあげられるメリットが、確定拠出年金を適用することのできる企業が広がったということです。
会社の規模が従来の3分の1にあたる、100名以上の従業員を有するという条件へ緩和されましたので、今まで会社の規模の要件を満たしていなかった会社員の方でも確定拠出年金への加入ができるようになりました。
また、これまで原則60歳未満までとなっている加入期間の上限を、「企業型」は70歳未満に、「個人型」は65歳未満まで、それぞれ延長し、現在60歳から70歳までの間で選べる受給開始年齢の選択肢を70歳以降にも広げることでより多くのニーズに応えることのできる資産運用の手法へと発展しました。
NISAにおいても、利用者数の多かった一般NISAとつみたてNISAに絞ることで制度をわかりやすくし、なおかつ税制優遇の期間を延長することになったので、すでにNISA口座を利用されている方はもちろんのこと、今後NISAを始める方にとってもメリットの大きな改正となっています。
税制改正によって損する人
私的年金制度に関してはそれほどネガティブな影響はありませんが、やはり一般NISAの2階建ての実施には賛否両論が出ています。
というのも、アクティブな運用をしたい方にとっては、長期で安定的なつみたてNISAの対象商品をわざわざポートフォリオに入れなければならなくなることは面倒ですし、投資の最適化ができなくなるなどのネックにつながります。
またこうした制度の複雑化によって、結果として制度利用のハードルを上げることにつながり、利用者数の伸び悩みを引き起こすのではないかという懸念もされています。
これから一般NISAを始めようと考えており、つみたてNISA対象商品に興味がなかったという方にとっては今回の改正はあまり嬉しくはないことかもしれませんね。
老後資金を貯めるなら結局iDeCoとつみたてNISAのどっちがおすすめ!?
最後になりますが、老後資金を貯めるという観点ではiDeCoとつみたてNISAのどちらが優れているのかを比較していきたいと思います。
そもそもiDeCoとは
iDeCoとは、一言でいうと、「自分で運用できる年金」です。別名を個人型確定拠出年金とも呼びます。
一般的に年金制度には、国民年金・厚生年金・企業年金などの種類がありますが、iDeCoは企業年金の一つです。
近年、少子高齢化や長寿化によって、老後生活に不安を抱える人が増えてきました。その中で「公的年金だけで老後生活を過ごすことができるのか」という不安の声も多く上がっています。
そこで、公的年金とは別に自分で年金を運用して、退職後に受け取る年金を増やすための施策として注目を浴びているのがイデコです。
政府もイデコの活用を積極的に応援しており、個人がイデコに掛けた投資金額(掛け金)を全額、税金から控除できるようにするなどのおまけをつけました。
イデコを利用することで老後資金を積み立てられるだけではなく、今支払う税金の金額まで安くできる一石二鳥の投資制度とも呼べますね。
そもそもつみたてNISAとは
つみたてNISAは名前の通り、毎年一定額を積み立て投資をすることが前提となっています。
NISAは、年120万円の投資上限額を一度に使い切っても複数回に分けても構いません。
しかし、積立NISAの年40万円の投資上限額は定時定額で使う必要があります。
毎月の積み立てであれば、1カ月あたり40万円÷12カ月=3万3333円ずつということになります。
NISAは個別の上場企業の株式への投資も認められるのに対し、つみたてNISAは金融庁に認定された投資信託、ETF(上場投資信託)だけが対象です。
例えばNISAの口座ではトヨタ自動車の株を買うことはできますが、積立NISAではできません。
最後にNISAと積立NISAは同時に利用することはできず、どちらかを選択しなければなりません。
iDeCoとつみたてNISAのオススメはどっち?
DeCoとつみたてNISAの違いを比較表で確認しましょう。
iDeCo | つみたてNISA | |
対象年齢 | 20歳~60歳 | 20歳~ |
最低投資金額(月々) | 5000円 | 100円 |
投資限度額(年間) |
→81万6000円
→14万4000円~27万6000円
→年間27万6000円 | 40万円 |
運用可能期間 | 加入~60歳まで(10年間延長可能) | 最大44年間(投資可能期間は2018年~2042年) |
資金の引き出し | 原則不可 | いつでも可能 |
非課税対象 |
| 利息・運用益 |
投資対象商品 | 定期預金・投資信託・保険 | 長期・積立・分散投資向けの一部の投資信託とETF(上場投資信託) |
手数料 |
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|
どちらも利益や運用益は非課税になりますが、iDeCoは毎月の掛金が所得控除になり、節税効果が高いといえるでしょう。
それに対し手数料の面からみると、iDeCoはつみたてNISAに比べて手数料がかなり高いですね。月々で見ると大したことは無いですが、どちらも長期間積み立てる前提のものです。
数十年払い続けると考えたら、手数料もばかにはできませんね。
ですから、節税効果を期待するのであればiDeCo、シンプルに運用して長い目で見た運用益を獲得したいのであればつみたてNISAということになりますね!
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