新型コロナウイルスによって、世界的に経済の動きが停滞し、景気の悪化が懸念されています。
各国の政府は様々な施策で困窮する人のための支援を講じています。
今回は各国で行われている新型コロナウイルスの経済対策を解説していきます。
日本の経済対策は?
総額108兆円の緊急経済対策
政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、総額108兆円の緊急経済対策を決定しました。
その中には子育て支援を目的に、児童手当の受給世帯に対して児童一人あたり1万円を支給する他、中小企業などを対象に、事業収入が前年の同じ月に比べて50%以上減少した事業者に、中堅・中小企業には200万円、フリーランスを含む個人事業主には、100万円をそれぞれ上限に減少分を給付するとしています。
この他税金や社会保険料についても、総額26兆円規模の支払いを猶予するとしています。
生産拠点の国内回帰を後押し
新型コロナウイルスの影響で、中国からマスクや自動車部品の供給が滞るなど、いわゆるサプライチェーンの脆弱性が浮き彫りになりました。
政府はこれを受けて、中国など特定の国に生産が一極集中している製品や部品について、生産拠点を国内に回帰させたり、都南アジアに移転させたりする企業の費用を補助するとしています。
中国の経済対策は?
中小企業対策
中国では、社会保険料の納付期限の延長を認めたり、企業が負担する年金や失業保険などの負担をおよそ5100億人民元、日本円で7兆9000億円あまりを軽減していく対策をとったことを明らかにしました。
また、失業保険の受給資格を満たしていない人に対しても、6ヶ月分の失業補助金を支給するなど、失業者への支援も強化しています。
雇用安定支援政策
中国国家統計局の発表によると、2月の失業率は前月比0.9ポイント増の6.2%となりました。
新型コロナウイルスは大学生の就職にも影響を及ぼしており、企業の採用意欲の後退によって、大学生の就職が困難になっています。
国務院は大学生の就職を支援するため、新卒採用を行う抽象零細企業に対して補助金を支給するとし、国有企業や社会的事業団体に対して、2020年と2021年の大卒生の採用規模を拡大することなどを求めています。
アメリカの経済対策は?
総額250兆円規模の経済対策
米国FRB(アメリカの中央銀行)は、新型コロナウイルスによる深刻な経済影響に対応するため、総額250兆円規模の経済対策を発表しました。
アメリカでは現在、失業保険の申請が後を絶たず、雇用環境の悪化が深刻化しています。FRBは実体経済への影響を少しでも緩和するために強力な金融緩和を進めており、中央銀行が金融機関以外の民間企業に直接資金供給を行うのは極めて異例となっています。
FRBは資金繰りが厳しくなっている中小企業に対して、1年間無利子の融資を行う他、大企業からは社債を買取り、財政が逼迫している州政府からは地方債なども買い取るとしています。
13万円の現金給付
米国政府は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急経済対策の一環として、大人一人に約13万円、子供に約5万5000円の現金給付を行うことを決定しました。
4月中旬には対象者への銀行口座への入金を始めたと発表しています。
イギリスの経済対策は?
賃金の8割を保証
英国政府は、新型コロナウイルス感染拡大を受けた新たな経済対策を発表し、企業規模にかかわらず、休業を余儀なくされる従業員の給与の8割を政府が補助することを発表しました。
一人あたり月2,500ポンド(日本円で約33万円)を上限とし、3月1日に遡って、当面3ヶ月実施するとし、延長の可能性もあるとしています。
中央銀行も利下げを継続
英国政府は、3月11日に世界金融危機後初の緊急利下げを行って以降、そこからわずか8日で、さらなる利下げを決定しました。
政策金利は過去最低の0.1%まで再度引き下げられ、加えて国債等の緊急買い入れによる2,000億ポンド(約26兆円)の量的緩和も発表し、政府・イングランド銀行は共に史上例を見ない財政・金融政策で危機に対応するとしています。
総額45兆円の資金繰り支援策を発表
その他英国政府は総額3,500億ポンド(約45.5兆円)を超える大型経済対策を打ち出しました。
その中には、銀行融資に対する政府保証や、減税・助成金による直接支援、最長3ヶ月の住宅ローン支払猶予などの家計向け支援などが含まれています。
スペインの経済対策は?
生産停止義務付けも給与支払い
新型コロナウイルスの感染拡大が広がる中、スペインでは3月30日より4月9日までの11日間にわたって、必要不可欠な部門を除く全ての生産活動の停止を義務付ける措置法が発行されました。
措置法の適用期間は、自宅待機の労働者にも通常の給与が支払われ、その期間の労働時間は活動再開後から2020年12月末までに回収することを定めています。
約2兆円の支援策
企業の生産停止義務付けにとどまらず、スペイン政府は厳しい移動禁止措置を設け、違反すると罰則が課されます。
厳しい感染封じ込め対策が行われる中で、経済への打撃は不可避だとして、スペイン政府は様々な緊急対策を発表しています。
中小企業の納税分割や延期措置、医療物資の調達強化等を柱とする、総額2兆円に及ぶ緊急対策を発表しています。
ドイツの経済対策は?
ドイツ連邦政府は、企業の経営破綻と従業員解雇の回避を目的として、大型の経済対策を打ち出しました。
経営破綻回避のための大型融資支援
連邦政府の支援により、ドイツ復興金融公庫は約53兆円の企業向け緊急融資を行う他、税関連の資金繰り支援を行うことを決定しました。
納税が困難な納税者は納税延期や、前年比で減収が見込まれる場合は前納金額の減額が可能になります。また、関連書類の提出遅れ、税納付の遅延による制裁処置の適用を遅らせるなどの対策を行うとしています。
中小企業への支援策
ドイツ政府は、新型コロナウイルスに対応する緊急対策パッケージを大幅拡張し、パンデミックに備えた緊急対策のほか、中小企業への給付金などが盛り込まれました。
中小企業ならびに零細企業に対する支援は、融資ではなく課税対象となる給付金とし、総額約5兆円の給付が決定しました。
従業員5人以下の事業者に対しては、3ヶ月分の緊急支援として最大105万円が、従業員10人以下の事業者には最大175万円が、一括で支払われます。
これらの支援を通じて、経済的困難に陥る企業の資金の流動性を確保することを目的としています。
短時間労働拡大などの緊急支援策
ドイツ連邦政府は、企業の経営破綻と従業員解雇の回避を目的として、経営危機に陥る危険がある場合は、雇用者は従業員を解雇するのではなく、労働時間を短縮することを求めています。
従業員に対して、労働時間減少による給与減少分の一部を政府が補填する、短時間労働給付金の制度がありますが、この適用条件を緩和し、短時間労働への切り替えを容易にする施策が行われています。
今までは総従業員数の3分の1に対して労働時間短縮を適用する場合にこの助成金が支給されていましたが、これを従業員の10%までに引き下げることとしています。
各国で深刻化している景気問題、最新情報にアンテナを
新型コロナウイルスによる景気停滞が世界的に深刻化する中、各国は様々な施策を打ち出し、困窮する人のための支援策を講じています。
この緊急事態の中で、常に最新情報にアンテナを張り、情報を取捨選択していくことが求められます。
一刻も早く事態が収束することを願いつつ、冷静な判断と落ち着いた行動を心がけるようにしたいものです。
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