弁護士や公認会計士に次いで最難関と言われる国家資格である税理士。
「税理士」という名前だけに税金にまつわるお仕事だということは分かるけれど、実際にはどんな仕事をしているのか、収入はどれくらいなのか疑問に思ったことはありませんか?
この記事では、税理士の仕事内容・平均年収をご紹介するとともに、税理士になるための方法を3つのステップに分けて詳しく解説していきます!
税理士の平均年収はいくら?
厚生労働省が公表した「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、税理士の平均年収は658.6万円(平均年齢44.9歳)となっています。
国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」より、日本の平均年収は433万円なので、税理士の平均年収は比較的高水準であると言えるでしょう。
それでは、税理士の平均年収を項目別に見ていきましょう。
【年代別】税理士の平均年収
まずは、税理士の平均年収を年代別に見ていきます。
統計データのないものについては「-」で表しています。
男 | 女 | |
20~24歳 | 約334万円 | 約281万円 |
25~29歳 | 約490万円 | 約330万円 |
30~34歳 | 約638万円 | 約450万円 |
35~39歳 | 約697万円 | 約420万円 |
40~44歳 | 約715万円 | 約557万円 |
45~49歳 | 約847万円 | 約528万円 |
50~54歳 | 約610万円 | 約695万円 |
55~59歳 | 約1133万円 | 約474万円 |
60~64歳 | 約569万円 | 約569万円 |
65~69歳 | 約434万円 | – |
70歳~ | 約314万円 | 約360万円 |
男女ともに、50代に年収のピークを迎えており、その後下がっていく傾向が見られます。
【都道府県別】税理士の平均年収
次に、税理士の平均年収を都道府県別に見ていきます。
統計データのないものについては「-」で表しています。
全国 | 658.6万円 |
北海道 | 450.2万円 |
青森県 | – |
岩手県 | 1102.9万円 |
宮城県 | 461万円 |
秋田県 | – |
山形県 | 722.7万円 |
福島県 | 618万円 |
茨城県 | – |
栃木県 | 718.5万円 |
群馬県 | 530.1万円 |
埼玉県 | 426.5万円 |
千葉県 | 740万円 |
東京都 | 740.4万円 |
神奈川県 | 639.8万円 |
新潟県 | 523.6万円 |
富山県 | 906.3万円 |
石川県 | 840万円 |
福井県 | 1170万円 |
山梨県 | 691.4万円 |
長野県 | – |
岐阜県 | 460.3万円 |
静岡県 | 659.5万円 |
愛知県 | 420.7万円 |
三重県 | 870.6万円 |
滋賀県 | 461.7万円 |
京都府 | 905.6万円 |
大阪府 | 620.3万円 |
兵庫県 | – |
奈良県 | 356.3万円 |
和歌山県 | – |
鳥取県 | 816.5万円 |
島根県 | 464.2万円 |
岡山県 | 210万円 |
広島県 | 467.6万円 |
山口県 | 525万円 |
徳島県 | 549.8万円 |
香川県 | 451.8万円 |
愛媛県 | – |
高知県 | – |
福岡県 | 596.9万円 |
佐賀県 | 415.9万円 |
長崎県 | 436.8万円 |
熊本県 | 534.5万円 |
大分県 | – |
宮崎県 | – |
鹿児島県 | 562.7万円 |
沖縄県 | 764.9万円 |
上の表をみると、都心から離れていても全国の平均年収を上回っている都道府県も多くあります。
そのため、税理士の平均年収は必ずしも都心に近づくほど高くなるとは限らないということが分かります。
税理士の生涯年収
年代別の平均年収をもとに税理士の生涯年収を算出してみると、
男性は
(334万円×490万円+638万円+697万円+715万円+847万円+610万円+1133万円+569万円+434万円+314万円)×5年間
=約3億2900万円、
女性は
(281万円×330万円+450万円+420万円+557万円+528万円+695万円+474万円+569万円+360万円)×5年間
=約2億3320万円
となりました。
ただし、上記はあくまで単純計算の結果であり、税理士の収入は働き方によって異なるため注意が必要です。
そもそも税理士ってどんな仕事?
税理士の仕事内容は、簡単に言うと「納税者のサポート」です。
法人税・所得税・消費税といった税金制度は一般の人にとってはかなり複雑な仕組みになっています。
そこで、税理士が納税者の相談相手になって納税の手助けをしたり、納税者に代わって税金の金額計算などを行います。
税理士の主な業務内容には、以下のようなものがあります。
業務①:「税務代理」
税務代理とは、個人や企業などの納税者の代わりに、税金の管理を行う税務署に対して「税金の申告・申請・不服申し立て」を行う業務のことです。
簡単に言うと、税理士が納税者と税務署の仲介役になるということです。
ちなみに「不服申立て」とは、納税者側が税務署の行った判断にどうしても納得できない場合、一定の手続きを行うことで争うことのできる納税者の救済制度です。
こうした業務内容に加えて、税金の申告に必要な書類の作成を行うのも税理士の仕事です。
業務②:「会計業務」
会計業務とは、お金の管理(財務)やお金の計算(会計)を行う業務のことです。
具体的には、納税者の税金の申告・申請を行う際に税金の計算をしたり、顧客の帳簿(お金の流れを記録したノートのこと)の記入などを行います。
特に帳簿の記入では非常に膨大な量を取り扱うため、税理士には正確さと速さが求められます。
業務③:「税務相談」
税金制度は、一般人にとって非常に複雑で分かりにくい部分も多いです。
そこで、納税者が税金に関して困ったときやわからないとき、知りたいときにプロの視点で相談に応じるのも税理士の役割です。
業務④:「経営コンサルティング」
最近では、税金に関するサポートに加えて、経営に関する課題解決を行う経営コンサルティングという業務を行っている会計事務所・税理士法人もあります。
具体的には、お金の流れを数値化して管理する「経理業務」のサポートや、場合によっては企業の経営戦略のサポートも行います。
税理士は、会社の会計や税金の管理を代わりに行っているため、必然的に会社の財務状況に詳しくなります。
そのため、税金だけでなく、経営に関するサポートができる税理士もいるのです。
その他の業務
上記の仕事内容の他にも、税理士には様々な業務があります。
例えば、「補佐人制度」が挙げられます。
これは、納税者の権利や利益を守るために、税理士が補佐人として弁護士とともに裁判所に出頭し、必要に応じて陳述することができる制度です。
さらに、税務署の職員が納税者に対して税金に関する質問を行う「税務調査」においても、納税者の利益を守るために税理士が立ち会うこともできます。
このように、税理士は納税のサポートだけでなく、納税者の権利を守るためのサポートも行っているのです。
働き方によって収入は異なる
一口に税理士といっても、働き方は様々です。そして、それぞれの働き方によって収入も異なります。
ここからは、税理士の働き方の種類について解説していきます。
税理士法人
税理士法人とは、2人以上の税理士が集まってできた会社のことです。
税理士法人の中でも、特に世界的に有名な4つの法人があり、まとめて「BIG4税理士法人」と呼ばれています。
BIG4税理士法人
- デロイトトーマツ税理士法人(従業員数 約1,060名)
- KPMG税理士法人(従業員数 約750名)
- PwC税理士法人(従業員数 約730名)
- EY税理士法人(従業員数 約780名)
BIG4税理士法人の年収
転職サイトdodaでは、各法人の年収幅は概ね以下のようになっています。
デロイトトーマツ税理士法人 | 950万円〜1,200万円(会計・財務コンサルタント) |
KPMG税理士法人 | 450万円~650万円(会計コンサルタント・財務アドバイザリー) |
PwC税理士法人 | 480万円~700万円(税務コンサルタント) |
EY税理士法人 | 450万円〜1,200万円(税務コンサルタント) |
【参考】求人情報・転職サイトdoda
上記の年収に幅があるように、BIG4税理士法人の収入は経験年数・役職・税理士資格保有者・科目合格者などによって変わってきます。
税理士法人や税理士事務所は、必ずしも税理士資格を持っていなくても働くことができますが、税理士資格を持っていなければできない業務が多くあるため、資格保有者の方が収入が高くなる傾向にあります。
ここからは、そのような項目別でBIG4税理士法人の年収を見ていきます。
【経験年数別】BIG4税理士法人の年収
次に、経験年数別の年収については厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」を参考にしてみました。
BIG4の従業員数にあたる企業規模100〜999人の平均年収(経験年数別)は以下のようになっています。
経験年数計 | 0年 | 1~4年 | 5~9年 | 10~14年 | 15年以上 |
約784万円 | 約484万円 | 約625万円 | 約552万円 | 約1106万円 | 約935万円 |
【役職別】BIG4税理士法人の年収
ここでは、KMPG税理士法人を例にとって解説していきます。
KMPG税理士法人では、一般的に以下のような順番で昇進していきます。
- スタッフ
- シニアスタッフ
- マネージャー
- シニアマネージャー
- ディレクター
- パートナー
まずは、それぞれの役職について簡単にご紹介します。
スタッフ
大学を卒業し新卒で入社すると、まずはスタッフ(アシスタント)としてキャリアをスタートさせることになります。
この段階では、新人研修を通して会計事務に必要な基礎的な知識・業務をインプットしていきます。
KPMGをはじめとするBIG4税理士法人は、外資系企業、上場企業、金融機関といった企業を依頼人としており、世界的に活躍しています。
そうした企業を相手とするサービス提供を、このスタッフの時期にじっくりと学んでいきます。
シニアスタッフ
一般的には、入社後3~5年でスタッフからシニアスタッフに昇進します。
スタッフの段階で基本的な業務の訓練を終えたシニアスタッフは、通常の業務全般を担当しつつ、従業員の育成・監督も行っていくことになります。
具体的には、部下の業務の進捗管理やシフト管理などが挙げられます。
マネージャー・シニアマネージャー
マネージャーやシニアマネージャーは、名前の通りスタッフやシニアスタッフを取りまとめると同時に、自分の担当する案件を管理する役割を果たします。
そのため、スタッフ・シニアスタッフに比べると、さらに責任感の求められる役職となります。
ディレクター・パートナー
マネージャーとしての競争を勝ち抜き、業績が認められた社員たちは、ディレクターやパートナーへと昇進することができます。
ディレクターやマネージャーは、一般企業で言う役員のような役職です。
彼らは、従業員の教育だけでなく、様々な依頼人との関係を構築していきます。
一般的に、入社から3~5年ほどでシニアスタッフ、10年ほどでマネージャー職、早くとも15年でディレクターやパートナーになるのが目安とされています。
次に、それぞれの各役職の年収を見ていきます。
転職求人サイトdodaによると、それぞれの役職の年収幅は概ね以下のようになっています(2022年8月時点)。
スタッフ | シニアスタッフ | マネージャー | シニアマネージャー | ディレクター | パートナー |
450~700万円 | 800~1000万円 | 1500万円~(実力により決定) |
マネージャー以降は、本人の実績や能力によって収入が大きく変わってくるため、上記はあくまで目安となります。
求人サイトを参考にする限り、おおよそ1000万円前後に落ち着くと言えるでしょう。
また、スタッフ・シニアスタッフには残業代が出ますが、マネージャー以降は管理職となってくるため、残業代が出ないことに注意が必要です。
企業内税理士
企業内税理士とは、一般企業で従業員として働く税理士のことです。
一般的にはお金の管理を行う経理業務がメインです。
しかし、勤務する企業が何をやっているかによって配属される部門が異なるため、仕事内容は多岐にわたります。
税金に関する業務に限らず、幅広い領域で活躍できることが、企業内税理士として働くことの魅力だと言えるでしょう。
また、企業内税理士の収入も企業によって異なります。
大手企業で実績を残している企業であれば高水準の収入をもらえる可能性は高くなりますが、規模が小さい企業であれば平均年収を下回ることもあります。
独立開業
独立開業とは、個人の税理士が自分で事務所を立ち上げて働くことを指します。
雇用されて働く企業内税理士に比べて、自由な働き方が可能であるため、個人の努力次第では平均収入を大きく上回る可能性があります。
ただし、独立開業の場合、仕事が与えられるのではなく、自分で仕事を取りに行く必要があります。
そのため、仕事を得られない限り収入を得ることはできません。
このように、自由に働ける一方で、大きな責任とリスクを背負うことになるため、開業にあたって事前に綿密な準備が必要になります。
パート・アルバイト
税理士は、正規雇用以外にもパートやアルバイトとして働くこともできます。
厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、パートやアルバイトとして働いている税理士(企業規模計)の平均時給は4406円となっています。
1日あたりの労働時間は平均6.7時間、1ヶ月あたりの労働日数は平均9.1日なので、平均年収を計算すると、4406円×6.7時間×9.1日×12ヶ月+97700円(ボーナス)=約332万円になります。
国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、一般的なパートやアルバイトなどの非正規雇用者の平均年収は176万円となっています。そのため、税理士資格を持っていると一般的な非正規雇用者の約2倍の年収を得られることが分かります。
税理士になるための3ステップ
①:税理士試験に合格する
まずは、国家試験の中でも最難関と言われる税理士試験に合格する必要があります。
税理士試験の概要
税理士試験では、会計学と税法に関する科目を計11科目のうち5科目受験し、合格すると税理士資格を取得することができます。
<受験科目一覧>
- 簿記論【必修】
- 財務諸表論【必修】
- 所得税法
- 法人税法
- 相続税法
- 消費税法または酒税法
- 国税徴収法
- 住民税または事業税
- 固定資産税
【出典】国税庁「税理士試験」
なお、上記のうち所得税法か法人税法のいずれかは必ず選択しなければなりません。
また、税理士試験では一度に5科目全て受験する必要はなく、1科目ずつ受験することが可能です。
そのため、数年かけて資格取得を目指す社会人の方も多い印象です。
実際に、国税庁の「令和3年度(第71回)税理士試験結果」によると、受験者数27,299人のうち、10,289人が41歳以上の受験者となっています。
試験日程・試験地
試験日程 | 例年8月上・中旬の連続する3日間 |
試験地 | 北海道、宮城県、埼玉県、東京都、石川県、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、熊本県、沖縄県(令和3年度) |
【出典】国税庁「税理士試験」
受験料
受験料は受験科目数によって異なります。
受験科目数 | 受験料金 |
1科目 | 4,000円 |
2科目 | 5,500円 |
3科目 | 7,000円 |
4科目 | 8,500円 |
5科目 | 10,000円 |
【出典】国税庁「税理士試験」
受験資格
税理士試験の受験資格は令和5年度から大幅に変わるため、従来の受験資格と変更点をあわせて紹介します。
<令和4年度(第72回)まで>
学識による受験資格 | 大学・短大・高等専門学校のいずれかを卒業した者(法律学または経済学に属する科目を1科目以上履修した者)、大学3年次以上の者(法律学または経済学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した者)、一定の専修学校の専門課程を修了した者(法律学または経済学に属する科目を1科目以上履修した者)、司法試験合格者、公認会計士試験の短答式試験に合格した者 |
資格による受験資格 | 日商簿記検定1級合格者、全経簿記検定上級合格者 |
職歴による受験資格 | 法人または事業を行う個人の会計に関する事務(従事期間2年以上)、 税理士・弁護士・公認会計士などの業務補助の事務(従事期間2年以上) |
【出典】国税庁「税理士試験」
<令和5年度(第73回)以降の変更点>
変更点①:会計科目の受験資格が不要に
変更点②:税法科目の「学識による受験資格」が拡大(1科目以上の履修が必要な科目が「法律学又は経済学」から「社会科学」に変更)
【出典】国税庁「税理士試験」
それぞれの受験資格には証明書が必要になるため、事前に準備しておきましょう。
会計科目の受験資格が不要になり、誰でも受験可能になったということで、受験者数が増えて倍率も上がりそうです。
令和5年度以降の受験者は、より綿密な対策が必要になると言えるでしょう。
②:2年以上の会計に関する実務経験を積む
次に税理士として登録するためには、2年以上の会計に関する実務経験を積んでおく必要があります。
実務経験の時期は必ずしも資格取得後である必要はありません。
そのため、会計事務所や税理士事務所でアルバイトとして働いたり、会計職に就きながら資格の勉強をしている人もいます。
③:日本税理士会連合会に登録する
国家試験に合格し、加えて2年間の実務経験を積むと、ようやく日本税理士会連合会に登録することができ、晴れて税理士を名乗ることができます。
その他の国家資格の年収はどれくらい?
これまで見てきたように、税理士になるまでの道のりは決して楽とは言えません。
しかし、独立開業して生涯働ける点や資格職ゆえに再就職しやすい点は一般的な職業と比較しても大きなメリットと言えます。
専門的な知識を身につけて働きたいという方はぜひ税理士を目指してみてはいかがでしょうか?
その他の国家資格の年収を知りたい方はこちらからどうぞ。
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