就職活動シーズン真っ只中となり、今まではなんとなくイメージで企業選びをしてきた学生さんの中にも、財務諸表をしっかりと分析して、「本当に入りたい企業か確かめてみよう」と考えている人もいるのではないでしょうか?
また、簿記の勉強を始めてみたものの貸借対照表と損益計算書がよくわからなくてなかなか先には進めなくなった、という人もいるかもしれません。
貸借対照表や損益計算書などの財務諸表は、商業高校や大学の会計の授業を履修しない限りはなかなか学校では教えられず、多くの人には馴染みの薄いものです。
しかし、多くの株式会社は有価証券報告書という1年間の活動をまとめた、いわばレポートのようなものを出しており、私たちはそれをかなり自由に閲覧することができます。
そうしたオープンな情報が提供されているにも関わらず、それを読むことができないのは勿体無い感じがしますよね。
今回は、簡単にではありますが会計学の入り口として、代表的な財務諸表である「貸借対照表」と「損益計算書」の二つには関係性で成り立つのかを紹介していきます!
貸借対照表とは!?資産と純資産・負債ってどう違う?
貸借対照表は、その時点での企業の財産状況を表す指標です。
簡単に貸借対照表を図で表すと、下のような形をしています。
資産 (会社の全財産) | 負債 (他者から借りているお金) |
純資産 (会社の正味の資産) |
まず、貸借対照表を見る上で最も重要な関係性の一つが、
資産=負債+純資産
という関係性です。
この関係性を「貸借一致の原則」と呼ぶので、このワードが出てきたら、「貸借対照表は右と左で大きさは一致するもの」と思い出してくださいね。
貸借対照表はしばしば「バランスシート」とも呼ばれます。
これは図表の右と左でバランスが取れている(均衡している)ことからきているものと言われています。
では、これから資産と負債、純資産について細かく説明していきます!
資産とは?流動資産と固定資産は何が違う??
ではまず貸借対照表の左側、資産の部門を紹介していきます。
上の図では細かく言及していませんでしたが、資産の中も「流動資産」と「固定資産」という項目に細分化されます。
資産といっても現金や証券、建物に土地といろいろありますから、どんな形式の資産なのかを明らかにしなくてはなりません。
資産を分類する上で重要になるのが、「現金に換金しやすいかどうか」という指標です。
現金に換金しやすい資産、具体的には1年以内に換金できるような資産を、流動資産と言います。
流動資産の具体例としては、現金はもちろんのこと、受取手形や有価証券などが該当します。
一方で換金が困難な資産を「固定資産」と言います。
これには土地や建物、機械などが該当します。
負債(他人資本)とは?
負債は、その時点において企業が返さなければいけないお金がいくら残っているかを表します。
仮に資産額が多くても、そのほとんどが負債であるような企業は少し注意して見る必要がありますよね。
負債の場合には、「支払いの時期が近いかどうか」を分類の材料とします。
先ほどの資産の場合と同様に、支払い期限が1年以内に迫った負債を「流動負債」、1年以上の支払い猶予のある負債を「固定負債」と呼びます。
流動負債としては、支払手形や短期借入金が該当し、固定負債には長期借入金や社債が当てはまります。
純資産とは?
では、残った純資産について説明していきます。
純資産は企業の持つ正味の財産高を表すものであり、純資産がマイナスの企業は倒産のリスクを疑う必要があります。
純資産は負債(他人資本)とは異なり、主に株主が会社に投資してくれた資金や利益を積み上げたものなので返済する必要がないもので、他人資本に対して自己資本とも呼ばれます。
純資産は株主資本とそれ以外に分けられます。
また、純資産を見ていく上で重要なのが自己資本率という値で、以下の数式で求めることができます。
自己資本率(%)=純資産÷資産×100
自己資本率が高ければ高いほど財政状態は安定的と見ることができ、自己資本率が40%を超えるくらいが財政的に安定している企業の目安と考えると良いでしょう。
なんで換金や支払い期間で並べるの?流動性配列法って?
ここまで、資産・負債・純資産を見てきましたが、多くに共通するルールが「流動性の高いものから上に記載する」というものです。
このルールを「流動性配列法」と言います。
例えば、負債と純資産はほぼ等しいだけあるにも関わらず、負債の方はほとんどが流動負債で資産の方はほとんどが固定資産である場合には、直近の支払いにとても対応はできません。
そのため、企業の財政状況はもちろんのこと負債の支払い能力があるかどうかもチェックする必要があります。
こうした会社の持つ支払い能力を表したものを「流動比率」と呼び、以下の式で求められます。
流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100
この指標が100%を下回るようだと、短期的な支払いに十分対応できるか不安がある企業と考えられます。
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損益計算書とは?営業利益と経常利益って何が違う?
今度は損益計算書を見ていきます。
損益計算書は、企業の期間中の経営成績を表す財務諸表です。
少し詳しくいうと、「その期間内にどのくらいの利益が出て、そのためにどのくらいの費用を犠牲にしたか」を対応させることを目標としています。
売上高 |
売上総利益 |
営業利益 |
経常利益 |
税引前当期利益 |
当期純利益 |
このように、損益計算書では細かい項目に分けて利益を生んだ要因や逆に足を引っ張ったのはどの事業なのかを明らかにします。
売上総利益とは!?
売上高は、その期間の企業の総収益を表します。
そうした売上高を上げるために、どのくらいの原価がかかったかを差し引いたものを売上総利益と言います。
また、この売上総利益はしばしば粗利とも呼ばれるので、押さえておきましょう!
売上総利益=売上高−売上原価
営業利益とは!?
営業利益は、その企業の本業のサービスや製品の販売を通じて得られた利益を指します。
営業利益は、先ほどの売上総利益から給与などの人件費といった本業の運営に不可欠なコストを指し引くことで求められます。
営業利益=売上総利益−販売費および一般管理費
経常利益とは!?
経常利益は先ほどの本業での成績に加えて、財務部門の成果を加えた成果を反映したものです。
営業利益との違いをうまく理解できていない人も多いので、「本業だけなら営業利益、財務活動も含めると経常利益」としっかり覚えておきましょう!
経常利益=営業利益+営業外収益−営業外費用
税引前当期純利益とは!?
経常利益に一時的な収益や損失を加味した指標を税引前当期純利益と言います。
営業利益や経常利益に比べてピックアップされることは少ないですが、何か大きな成果や不祥事などがあった場合には前年度の税引前当期純利益と大きく乖離する場合があるので、そうした場合には理由も含めてチェックするのが良いと思います。
税引前当期純利益=経常利益+特別利益−特別損失
当期純利益とは?
ここまで長々とやってきましたが、やっと最後の当期純利益まできました。
当期純利益は、税引前当期純利益から法人税などの税金を支払った残りを指します。
当期純利益は会社が行う全ての事業の成果とも言えるので、その年の会社の経営成績をダイレクトに見たい場合には、この指標をチェックすると良いでしょう。
当期純利益=税引前当期純利益−法人税などの税金額
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貸借対照表と損益計算書の違い!ストックとフローって?
ここまで、貸借対照表と損益計算書をそれぞれ説明してきました。
なんとなくは理解できたつもりだけど、二つの違いがイマイチわからないなんて人もいるのではないでしょうか?
ここで、わかりやすいバスタブの例を用いて貸借対照表と損益計算書の概念上の違いを説明していきます!
その前に一つ確認したいのが、ストックとフローの概念です。
ストックとフローは会計学に関わらず、経済学など幅広い分野で出てくるものなので、これを機に学習しましょう!
ストック・貸借対照表が表すのはバスタブに溜まった水を考える!
ではまず、ストックの概念を説明します。
ストックは簡単にいうと、ある時点でどのくらいの水がバスタブに溜まっているかを表すものです。
その水が蛇口Aから来たものなのか、蛇口Bから来たものなのかを区別することに意味があります。
これを貸借対照表に置き換えると、ある時点でどのくらいの資産があるか、またその資産は他人のもの(負債)か自分のもの(資産)かを明らかにする役割を貸借対照表が担っているのです。
また、水はどこからともなく湧いてバスタブにたまるなんてこともないので、資産=負債+純資産の貸借一致の原則もバスタブの例から確認できますね。
フロー・損益計算書はバスタブに注がれる水を考える!
フローは、ある一定期間中に水がどのくらい増減したかを考える概念です。
バズタブに水が注がれることを収益が上がること、反対にバスタブから水が抜けていくことを損失が出ることと考えることで、損益計算を行います。
フローはストックに比べて動的なもので、期間中の増減に着目することに大きな意義があるのです。
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まとめ
貸借対照表と損益計算書がどんなものか、また両者にはどんな違いがあるかはわかりましたか!?
これから就活で企業研究をしてみようという人や、株式投資のために企業の経営状態を自力で調べたいなんて人は今後財務諸表に向き合う機会は増えてくるのではないでしょうか?
また、簿記を受験する予定の方も入り口でつまずいて勉強が嫌になると勿体無いので、今回の内容は何度も読み返して頭にたたき込むと良いと思います!
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