個人事業主の節税対策で、最初に思い浮かぶのが経費を増やすということですよね。
ただ、闇雲に経費を増やしたところで、税務署に見つかれば、修正を求められるか、最悪の場合ペナルティを食らいます。
そうならないように、個人事業主の経費にはどのようなものが計上できるのか、あらかじめ知っておきましょう。
今回は、個人事業主の経費に計上できるものとできないものを紹介します。
また、個人事業主から恐れられている、税務調査が来る可能性のあるケースについてもまとめました!
どこまで必要経費にできる?基準は?
経費にできるかできないかというのは、なかなか判断がしづらく、担当の税務署員によっても、判断が分かれることがあるようです。
しかし、個人事業主が、経費として計上できるかどうかというのには、大まかな3つの基準があります。
事業との関連性がある出費か
これが最も重要で、支出を経費として計上するには、その支出が事業と関連している必要があります。
売り上げに関わる出費であって、仮に税務署の人に聞かれたときに、事業との関連性をしっかり説明できなくてはなりません。
領収者やレシートで支出を証明できるか
支出を経費として計上するには、その支出の証明が必要です。
一般的にはレシートや領収書ですが、最近増えている、電子記録でもOKです。
また、経費として計上できるか怪しいものは、用途をしっかりメモしておくことが重要です。
相場金額から大きく外れていないか
事業関連の支出だったとしても、常識の範囲から大きく超えているものだと、税務署に怪しまれます。
相場から大きく逸脱した経費には、本当に必要なものなのかという疑惑がもたれることがあります。
経費は良識の範囲内で計上しましょう。
経費で落とせる意外なお金9点!
自宅の家賃
- 勘定科目:地代家賃
自宅をオフィス兼用で使っている人は、その家賃を経費として計上することが出来ます。
しかし、自宅の100%を事業用に使っているわけではないので、仕事で使っている分を計算して、家賃の何割かを経費として計上することになります。それを家事按分といいます。
例えば自宅のスペースのうち、3割を仕事用に使っていたら、家賃の3割を経費として計上することが出来ます。
電気・ガス等の水道光熱費
- 勘定科目:水道光熱費
電気ガス等の水道光熱費も経費として計上することができます。
オフィス専用の水道光熱費は全額計上できますが、自宅兼オフィスとしている場合は、家賃と同じように、家事按分しなくてはなりません。
電気代は使用時間をもとに按分することが普通ですが、ガス・水道代は按分が難しいです。
キッチンや洗い場を多く使う事業なら、多くの割合で計上できますが、水道やガスが関係ない職種だと、なかなか計上することは難しいです。
場合によっては、水道・ガスをまったく計上できないこともあるので、税理士か税務署に相談してみましょう。
WiFi等のインターネット料金
- 勘定科目:通信費
Wi-Fi等のインターネット料金も、経費として計上することが出来ます。
ただ、自宅・オフィス兼用の場合は、こちらも家事按分する必要があります。
インターネット料金の家事按分は、日数や時間をもとに計算します。
引っ越し費用(仲介手数料・引越し業者への支払い・礼金)
- 勘定科目:雑費(仲介手数料・引っ越し業者への支払い)、地代家賃(礼金)
引っ越し費用も経費とすることが出来ます。これも、自宅オフィス兼用の引っ越しなら、家事按分する必要があります。
ただ、敷金だけは費用ではなく、資産として処理しなくてはなりません。
敷金は「投資その他の資産」として、計上しましょう。
仕事の情報収集のための書籍・DVD代
- 勘定科目:新聞図書費
仕事の情報収集のための本や雑誌、DVDの費用は経費として計上することができます。
もちろん購入した書籍などが事業に関係していれば経費となりますが、一般常識や世界情勢の情報に関する書籍などは、直接事業に関連していなくても、経費として計上できるケースが多いです。
取引先の冠婚葬祭関連費用(香典やご祝儀等)
- 勘定科目:接待交際費
取引相手や事業関連の方の冠婚葬祭に関する費用は、接待交際費として計上することが可能です。
その際には、金額と日付をメモしておき、式に参加した証拠も保管しておきましょう。
ビジネス関係者へのお土産代
- 勘定科目:接待交際費
ビジネス関係者のお土産代も経費に計上できます。
領収書と、渡した相手や企業がわかるメモなどを用意しておきましょう。
盗難された事業用の現金
- 区分:雑損失
泥棒や強盗などで、事業用のお金が盗まれてしまったっ場合、経費として計上することが出来ます。
ただ、そのためには盗まれたお金が事業用のものであったことを証明しなくてはなりません。
そのために、日ごろから帳簿を付け、お金の管理をしていることが重要です。
また、警察に提出した被害届の控えも一緒に保管しておきましょう。
打ち合わせ・作業で使ったカフェなどの飲食代
- 勘定科目:接待交際費
取引先や作業で利用したカフェなどの飲食代は、接待交際費として計上することが出来ます。
領収書に打ち合わせの相手や人数などをメモしておくと、後からわかりやすいです。
経費では落とせないお金6点
事業主自身の税金・社会保険料
事業主自身の健康診断代や、住民税・所得税などは経費として計上することが出来ません。
個人事業主の国民年金や国民健康保険料、生命保険料などは、経費にはなりませんが、所得控除に記入することで節税することが出来ます。
スーツやビジネス鞄
スーツやビジネス用の鞄は事業に関連するため、経費にできると思う方もいるかもしれませんが、個人的な衣服費とされ、私用でも使えるとの観点から経費計上できないケースが多いです。
ただし、仕事中の作業着や制服といった形で、仕事でしかスーツを着ないことが主張できる場合は経費参入できます。このあたりは判断が別れるところなので、迷ったら税理士に聞いてみることをおすすめします。
家族・親戚に関する支払い費用
生計を一とする家族や親族への給与などの支払い費用は、経費としては計上することが出来ません。
なぜなら、生計を一とする親族に給与を支払うのは、自分に給与を支払うのと同じとみなされるためです。
美容院代・化粧代
仕事上身だしなみを整えるのに、美容院に行ったり、化粧をすることは必要なので、経費として計上されるべき、と思われるかもしれませんが、美容院や化粧は普段からするものであるので、原則、経費にはなりません。
ただ、取材を受けるなど、明らかに普段以上の身だしなみが必要とみなされる場合は、その分に限り経費として計上できることがあります。
その際は、広告宣伝費として計上しましょう。
金融機関からの借入金(住宅ローン)の元金
金融機関への借入返済の元金は、経費にはなりません。
経費として計上できるのは、利息のみです。
引っ越し時の敷金・保証金
引っ越し時の敷金や保証金は経費ではなく、資産として処理します。
敷金は退去時に帰ってくるという名目のお金ですので、経費にはならないんです。
罰金・反則金
業務中に起こした交通違反などの罰金や反則金は経費にはなりません。
ただ、業務中の駐車違反の際の、レッカー代は経費になります。
レッカー代は雑費として計上しましょう。
1点の購入価格が10万円以上のモノ(パソコン・機械等)
一点の値段が10万円以上のものは、経費ではなく、資産となります。
値段が10万円から20万円未満のものは、一括償却資産として、3年間で均等償却します。
20万円以上のものは、固定資産となるので、それぞれ定められた法定耐用年数で償却します。
例えば、パソコンは4年、鉄筋コンクリートの事務所は50年です。
個人事業主の経費に上限はある?いくらまで経費算入できる?
結論から言うと、個人事業主の経費に上限はありません。
事業に関係する経費であれば、上限無く経費とすることが出来ます。
ただ、年間の売り上げに対して逸脱した経費だと、税務署に怪しまれることが多いです。
年間売り上げ300万円の個人事業主が、経費として1000万円使っていたら、さすがに変ですよね。
もちろん、正当な理由があればいいですが、根拠のある説明ができるかどうか、ということがポイントです。
個人事業主やフリーランスに税務調査が入る可能性はある?
個人事業主に税務調査が入る可能性はあるんでしょうか?
平成27年の調査データによると、個人事業主に税務調査が入る確率は1.1%です。
また、以下のようなケースだと税務調査が入る場合があります。
- 売り上げが900万円
売り上げが1000万円を超えると消費税がかかるので、消費税課税を嫌って売り上げを過少申告している事例があるため。
- 経費が多すぎる
先ほども述べたように、売り上げに関して経費が多すぎると、税務署が怪しんで税務調査にやってくる可能性があります。
- 税務調査に入られやすい業種である
バーや外国料理などの業種は、毎年不正が見つかりやすいので、そもそも業種だけで疑われることがあります。
- 税務署からの連絡を無視している
税務署からの連絡を無視していると、税務調査がやってきます。
連絡を受けて、簡単に修正するだけで済む場合もあるので、税務署からの連絡は無視しないようにしましょう。
どちらにせよ、しっかり記帳・記録していれば、税務調査に入られても大丈夫です。
個人事業主の経費と勘定科目一覧まとめ!
最後に、個人事業主の必要経費と勘定科目を一覧でまとめます。
- 租税公課:税金や公共料金として支払った費用
例:個人事業税・固定資産税など
- 荷造運賃:商品発送で必要となる費用
例:箱・段ボールなど
- 水道光熱費:事業に必要な水道光熱費
例:水道代・電気代など
- 旅費交通費:事業で必要な旅費
例:バス代・タクシー代など(交通系マネーのチャージ代は基本的に不可)
- 通信費:事業で使用する通信費
例:インターネット料金・切手代など
- 広告宣伝費:事業の広告費
例:宣伝費用
- 接待交際費:取引先と交際費
例:飲食費・お中元の費用など
- 新聞図書費:事業に関する情報収集のための費用
例:新聞料金・書籍費用など
- 損害保険料:事業のための保険料
例:火災保険料・自動車保険料など
- 修繕費:事業に必要なものの修理代
例:自動車の修理代・店舗の修理代など
- 消耗品費:消耗品の費用
例:文房具費用・家具費用など
- 減価償却費:事業に関するものの減価償却費
例:建物の減価償却費・自動車の減価償却費など
- 福利厚生費:従業員のために支払った経費
例:従業員の慶弔見舞金・従業員の健康診断代など
- 給料賃金:従業員の給料
例:従業員の給料・従業員の賞与など
- 外注工賃:外部の業者に委託した費用
デザイン費・ホームページ作成の費用など
- 利子割引料:借入の支払利息や手形の割引料
例:金融機関への支払い利息・自動車ローンなど
- 地代家賃:事務所などの手地や建物にかかる費用
例:店舗家賃・駐車場料金など
- 貸倒金:回収できなくなった売掛金や貸付金
例:売掛金・未収金など
- 雑費:上記のどれにも属さない費用
例:ごみ処理代・クリーニング代など
- 専従者給与:青色事業専従者に支払う給料
例:青色事業専従者として従事している家族への給与
以上、個人事業主が経費にできるものとできないものをしっかりと見極めて、ルールの範囲内で節税対策をしていきましょう。
暮らしに役立つお金の情報を無料でお届けしています!