化学業界とは、石油、ガス、繊維、紙・パルプ、電子材料など、細分化された種々の化学分野に携わる企業から構成されます。プラスチックや衣料などの日常品だけでなく、自動車部品や電池材料などの工業用製品まで、これらの化学製品なくして私たち現代人の生活は成り立ちません。
以下で、化学業界各社の平均年収・売上高ランキングから、各社の基本情報とその比較、化学業界全体の動向までご紹介します。業界研究にも繋がること間違いなしなので、ぜひ参考にしてみて下さい!
化学メーカーの平均年収ランキング!20位〜11位
ここでは化学業界の平均年収ランキングトップ20と各社の基本情報をご紹介していきます。
第20位 OATアグリオ 760万円
- 売上高 141億円
- 営業利益 18億円
- 従業員数 281名
- 本社 東京都千代田区神田小川町1-3-1 NBF小川町ビルディング
- 設立年 2010年
OATアグリオでは、「防除技術」、「施肥灌水技術」、「バイオスティミュラント」をコアコンピタンスとして、農薬や肥料の販売だけでなく、作物が必要な時に必要な分だけの水と肥料を正確に与えられるように自動化された養液土耕栽培システムの販売を行なっています。
殺虫剤の『オンコル』は日本国内でロングセラーとなっており、海外でもアジア、中南米、アフリカで展開しています。また、殺ダニ剤の『ダニサラバ』も欧州、米州、中国、アジア、中東、アフリカと着々と登録地域を伸ばしています。
第19位 大阪有機化学工業 761万円
- 売上高 265億円
- 営業利益 32億円
- 従業員数 401名
- 本社 大阪府大阪市中央区安土町1-7-20
- 設立年 1946年
大阪有機化学工業株式会社では、化成品としては、塗料や粘接着剤などの樹脂原料への応用が可能な蒸留アクリレートを中心に販売しています。また、IT産業を支える電子材料としてディスプレイの表示用材料や半導体用材料、さらには、機能化学品として化粧品原料などの販売も行なっています。
第18位 ニイタカ 763万円
- 売上高 167億円
- 営業利益 10億円
- 従業員数 367名
- 本社 大阪府大阪市淀川区新高1-8-10
- 設立年 1963年
株式会社ニイタカでは、業務用洗剤、除菌剤、漂白剤や、固形燃料、食品添加物、医薬部外品などの製造販売を行なっています。
また、フードビジネスに携わる企業に対する衛生管理支援サービス等の提供もしており、最適な洗剤・除菌剤の選択と提供、専門スタッフによる実践的な衛生管理の指導、システム導入後の定期点検などにより、衛生管理の推進をサポートしています。
第17位 東京応化工業 767万円
- 売上高 924億円
- 営業利益 105億円
- 従業員数 1,611名
- 本社 神奈川県川崎市中原区中丸子150
- 設立年 1940年
東京応化工業株式会社(tok)では、写真の原理に似たフォトリソグラフィという技術を当社のコア・テクノロジーとして掲げ、半導体、液晶ディスプレイ、半導体パッケージ/実装などの幅広い分野で活躍しています。
スマホやタブレット、パソコン、テレビ、太陽電池パネルなど、私たちの身近にtokの微細加工技術が生かされています。
その他、無機・有機化学薬品等の製造販売も手がけます。
第16位 日本パーカライジング 770万円
- 売上高 1,148億円
- 営業利益 179億円
- 従業員数 4,222名
- 本社 東京都中央区日本橋1-15-1パーカービル
- 設立年 1928年
日本パーカライジング株式会社は、化成処理薬剤、圧延油、防錆油などの製造販売を行う薬品事業、防錆、熱処理、めっき、塗装などの受託加工を行う加工事業などを展開しています。金属表面処理では日本首位に位置するのが特徴です。
第15位 太陽HD 776万円
- 売上高 522億円
- 営業利益 113億円
- 従業員数 1,268名
- 本社 東京都練馬区羽沢2-7-1
- 設立年 1953年
太陽ホールディングス株式会社は、あらゆる電子機器に使用される、ソルダーレジストというプリント基板表面の劣化を抑制したり不要な部分への半田の付着を防ぐ化学材料で世界トップシェアを誇ります。
また、エレクトロニクス分野だけに留まらず、医薬品や食糧、エネルギーなどの分野にも事業を展開しています。
第14位 エス・ディー・エスバイオテック 778万円
- 売上高 129億円
- 営業利益 14億円
- 従業員数 170名
- 本社 東京都中央区東日本橋一丁目1番5号ヒューリック東日本橋ビル
- 設立年 1968年
株式会社エス・ディー・エスバイオテックは出光興産グループの農薬ビジネスの中核企業であり、農薬の研究開発、製造から販売までを行う一貫型企業として、国内や海外の農業を支えている会社です。
第13位 日産化学工業 784万円
- 売上高 1,933億円
- 営業利益 349億円
- 従業員数 2,511名
- 本社 東京都中央区日本橋2-5-1日本橋高島屋三井ビルディング18・19階
- 設立年 1921年
日産化学工業株式会社は液晶配向膜などの機能性材料と農薬を収益柱とする一方、医薬品や基礎化学品も手がける化学メーカーです。また、新事業では環境調和材料やライフサイエンス材料等も取り扱っています。
売上高研究開発費比率と利益率が高いのが特徴的と言えます。
第12位 JCU 789万円
- 売上高 231億円
- 営業利益 69億円
- 従業員数 559名
- 本社 東京都台東区東上野4-8-1TIXTOWER UENO
- 設立年 1968年
株式会社JCUは2003年に親会社からMBOにより独立しわずか4年で東証一部上場を果たした、めっき薬品大手です。
自動車業界では、国内主要メーカーの部品加工の現場で当社薬品が使われ約65%のシェアを誇り、スマホやタブレット端末で使われるプリント基板用薬品でも世界シェア約70%を占めています。
第11位 日本高純度化学 791万円
- 売上高 106億円
- 営業利益 10億円
- 従業員数 49名
- 本社 東京都練馬区北町三丁目10番18号
- 設立年 1971年
日本高純度化学株式会社は、プリント基板、コネクターおよびリードフレーム等の電子部品の接点、接続部位に使用されるめっき薬品の開発から製造販売までを主な事業内容としています。
エレクトロニクス分野を最大のターゲットとしており、製品開発においては海外からの技術導入に頼らない当社独自の開発を進め、長年にわたって技術の集積を図っています。
化学メーカーの平均年収ランキング!10位〜6位
第10位 日本触媒 799万円
- 売上高 3,228億円
- 営業利益 267億円
- 従業員数 4,219名
- 本社 大阪府大阪市中央区高麗橋4-1-1興銀ビル
- 設立年 1941年
株式会社日本触媒は、高吸水性樹脂で世界首位、アクリル酸世界3位を誇る化学メーカーです。
ポリエステル繊維、衣料用/台所用洗剤、ペットボトル樹脂、コンクリート混和用ポリマー、粘性接着剤、塗料、印刷インキ、触媒、高吸水性樹脂といった化学製品の販売を手がけます。新規成長柱としては電子材料を掲げています。
第9位 日東電工 803万円
- 売上高 8,562億円
- 営業利益 1257億円
- 従業員数 26,310名
- 本社 大阪府大阪市北区大深町4-20グランフロント大阪タワーA
- 設立年 1918年
日東電工株式会社は、基幹技術である粘着、塗工、高分子機能制御、高分子分析・評価技術をベースとしてグローバル展開しており、海外売上は売上全体の7割を超えるほどになっています。
事業は自動車・他輸送機器、住宅・住宅設備、素材、電子デバイス、医療など、多岐に渡って展開しています。
第8位 日本ペイントHD 803万円
- 売上高 6,052億円
- 営業利益 749億円
- 従業員数 20,257名
- 本社 大阪府大阪市北区大淀北2-1-2
- 設立年 1898年
日本ペイントホールディングス株式会社は、国内塗料のパイオニアとして知られる総合塗料メーカーで、塗料及びファインケミカルの製造販売を主な事業としています。
昭和37年に早くもアジア企業の基盤となる合弁会社をシンガポールに設立して以来積極的に海外事業を推進しており、世界第4位のシェアを占めています。
第7位 三井化学 830万円
- 売上高 1兆3,285億円
- 営業利益 1,034億円
- 従業員数 17,277名
- 本社 東京都港区東新橋1-5-2汐留シティセンター
- 設立年 1955年
三井化学株式会社は三井グループの大手化学メーカーで、化学業界での売上高ランキングでは第3位となっています。
モビリティ、ヘルスケア、フード&パッケージングを事業の中心に据え、いくつかの機能樹脂製品で世界トップシェアを誇っています。
第6位 信越化学工業 842万円
- 売上高 1兆4,414億円
- 営業利益 3,368億円
- 従業員数 20,155名
- 本社 東京都千代田区大手町2-6-1朝日生命大手町ビル
- 設立年 1926年
信越化学工業株式会社は、主要事業である塩化ビニル、合成石英、半導体シリコン事業では世界シェア第1位を誇っています。ただし建設資材に主に使用される塩化ビニルや様々な電子機器に搭載される半導体シリコンの売上は景気の影響を強く受ける傾向にあるので、主要事業以外の売上拡大が中期経営計画の中で重視されています。
化学メーカーの平均年収ランキング!5位〜1位
ここでは化学業界の平均年収ランキングトップ5と各社の基本情報をご紹介していきます。
第5位 住友化学 844万円
- 売上高 2兆1,905億円
- 営業利益 2,509億円
- 従業員数 31,837名
- 本社 東京都中央区新川2-27-1 東京住友ツインビル東館
- 設立年 1925年
住友化学株式会社は、住友グループの大手総合化学メーカーで、後述の売上高ランキングでは業界第二位に位置します。
売上収益の内訳は石油化学が31%、医薬品が23%を占め、その他エネルギー・機能材料や情報電子化学分野、健康・農業関連事業などを手がけています。
他の日本の化学メーカーよりも早い段階から海外への事業展開を行っており、売上の大半を海外が占めることが特徴的です。
第4位 大陽日酸 848万円
- 売上高 6,462億円
- 営業利益 599億円
- 従業員数 16,746名
- 本社 東京都品川区小山1-3-26 東洋Bldg.
- 設立年 1918年
大陽日酸株式会社は後述の三菱ケミカルホールディングス傘下にある、産業ガスメーカーであり、産業ガス事業では国内シェア第一位、世界第五位に輝きます。
日本の産業界を根幹から支える鉄鋼業や化学工業をはじめ、自動車などの金属加工分野や、近年急成長を遂げているエレクトロニクス産業において、酸素、窒素、アルゴンなどのガスが大量に使われており、大陽日酸はあらゆる産業分野にガスを供給しています。
大陽日酸は2018年に同業の米プラクスエアから欧州事業の一部を買収し、日本の化学メーカーによる海外企業買収で過去最大規模の案件となりました。
第3位 旭化成 921万円
- 売上高 2兆422億円
- 営業利益 1,984億円
- 従業員数 34,670名
- 本社 東京都千代田区神田神保町1-105神保町三井ビルディング
- 設立年 1931年
旭化成株式会社は、繊維、ケミカル、エレクトロニクス等のマテリアル領域の事業に加え、住宅・建設事業、医薬・医療事業などを展開します。
代表的な商品としては、料理に使用するサランラップやジップロックなどがあります。
第2位 積水化学工業 922万円
- 売上高 1兆1,074億円
- 営業利益 992億円
- 従業員数 26,080名
- 本社 大阪府大阪市北区西天満2-4-4堂島関電ビル
- 設立年 1947年
積水化学工業株式会社は、住宅事業、環境・ライフライン事業、高機能プラスチック事業などを手がけます。
高機能プラスチック事業では、エレクトロニクス、車輌・輸送、住インフラ材、ライフサイエンス分野などを扱っています。
第1位 三菱ケミカルHD 1,099万円
- 売上高 3兆7,244億円
- 営業利益 3,557億円
- 従業員数 69,230名
- 本社 東京都千代田区丸の内1-1-1
- 設立年 2005年
株式会社三菱ケミカルホールディングスは、後述の売上高ランキングで第一位に輝く日本最大の化学会社です。
2010年に合成繊維最大手の三菱レイヨンを完全子会社化により経営統合し、国内で業界初の売上高3兆円規模の企業グループになりました。先ほど取り上げた大陽日酸も2014年に三菱ケミカルHDの子会社となっています。
売上の内訳としては、素材が売上の半分ほど、機能商品が30%ほどを占めています。
化学メーカーの年収は平均と比べて高い?低い?
業界地図の11ページ40歳モデル年収の業界平均と比較してみます。
- 40歳全体の平均年収・・・600万円
- 40歳時点での化学業界の平均年収・・・633万円
化学業界の平均年収は、他業界と比べて高めであることがわかります。企業によって年収のバラつきはありますが、全体的に高い年収を獲得している人が多いようです。
化学製品の世界的な需要拡大をうけ、年収もじわりじわりと上昇傾向にあります。
化学業界各社の平均年齢、勤続年数、残業時間は?
次に化学業界年収ランキング上位企業の平均年齢、平均勤続年数、残業時間、有給日数を見ていきましょう。
ここでは、年収だけを比較するのではなく、残業時間や平均年齢など複数の視点で企業分析をすることでより深い企業理解をすることができます。
平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 残業時間(月) | 有給休暇消化率 | |
三菱ケミカルHD | 1,099万円 | 46.1歳 | 20.5年 | 7.7時間 | 52.5% |
積水化学工業 | 922万円 | 42.6歳 | – | 28.4時間 | 37.0% |
旭化成 | 921万円 | 42.7歳 | – | 21.7時間 | 70.3% |
大陽日酸 | 848万円 | 43.5歳 | 18.0年 | 27.5時間 | 47.8% |
住友化学 | 844万円 | 40.3歳 | – | 27.4時間 | 47.2% |
上記のどの指標を重視するかは人それぞれ違うでしょう。ここでは分析のポイントをいくつか紹介します。
1.平均年齢は何歳か・・・年収が多少低くても平均年齢が低ければ生涯給与は高い可能性がある。
2.有休消化率はどのくらいか・・・有休取得可能日数だけでなく実際の消化日数を比べることが大切。取得率が低ければ有休申請しづらい社風の可能性も。
3.残業時間は何時間か・・・いくら平均年収が高かったとしても残業時間が多く、体を壊してしまっては元も子もない。
化学メーカー業界の市場規模・動向、今後の課題は?
化学業界の市場規模
化学業界は国内市場28兆6,220億円に上る大規模な業界です。
2011年から2014年は世界的な原油価格の上昇により、業績が悪化したものの、2015年以降は石油価格の下落や世界景気の回復に伴い、市場規模は増加傾向にありました。ただ2018年に再び石油価格の上昇に加え円高の影響を受け、増収ながら減益となる企業が散見されました。
今後の業績も同じように石油の値段に大きく左右されることは必至と考えられますが、少しでもこの乱高下する原油価格の影響を和らげるために、石油化学への依存度を減らす取り組みを行っている企業も見られます。
化学業界のトピックス
自動車分野の開拓
現在自動車メーカーはエンジン車を事業の中心に据える一方、人口知能や電動化などの多方面の課題を抱えており、自動車の軽量化のための高機能プラスチックや電池部材の需要が高まってきています。
自動車分野を開拓する上で、素材を扱う化学メーカー各社は有力自動車メーカーが多数ある欧州市場をターゲットにしています。
ただ、日本の素材メーカーは今まで日本の自動車メーカーとの取引が主であったので欧州市場への参入は容易ではありませんが、三井化学、旭化成など各社はM &A(合併・買収)による打開を画策しているところです。
モノづくり+α
製品開発のスピードが加速し、新製品の話題性や新規性が失われるのが早くなってきているのが現状です。そのため総合化学メーカーは付加価値の高い高機能素材・材料分野の強化を進めています。
液晶ディスプレイ用材料や半導体用材料などの高機能材料において、日本の化学メーカーは世界市場で高いシェアを占めており、今後もさらなる成長が期待できるでしょう。
化学業界の課題
国内市場の頭打ち
化学業界の国内市場は、人口減少などの影響で頭打ち〜減少傾向にある。国内の余った生産能力を輸出で埋めると同時に、ナフサからエチレンなどの石油化学製品を生産する設備であるエチレンプラントの統廃合が進められています。
一方で世界的には需要拡大が拡大していることを受け、今後は国内だけでなく海外にも目を向け、国際市場のさらなる開拓に乗り出す動きが大きくなっていくことが予想されます。
化学メーカーの売上高ランキング!
化学業界の売上高ランキング
ここでは化学業界の売上高ランキングをご紹介します。
- 三菱ケミカルHD 3兆8,230億円
- 住友化学 2兆1,017億円
- 三井化学 1兆3,438億円
- 信越化学工業 1兆2,798億円
- 旭化成 8,355億円
ご覧の通り、ランキング第一位には三菱ケミカルHDがきて、それに住友化学、三井化学が続くかたちになっています。
化学業界の平均年収ランキングに加え、各企業の基本情報とその比較、業界動向、売上高ランキング等をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
国内市場が縮小する一方で、世界的な需要拡大に伴う海外市場のさらなる開拓が進むなど、今後も目が離せません。
化学業界に転職を考えている方は、業界の動向を掴みつつ、各企業のHPなどからより詳細かつ最新の情報をチェックしてみてください。
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