2021年に13年ぶりの宇宙飛行士の募集を開始したJAXA。
「宇宙飛行士の年収って実際どれくらい?」
「宇宙飛行士って宇宙飛行以外に何してるの?」
「日本とアメリカで宇宙飛行士の収入はどれくらい違う?」
「どうやったらなれるの?」
宇宙飛行士という職業に対して、このような疑問を持ったことがある方も多いと思います。
特殊な職業なだけに、収入事情や仕事内容には謎が多いです。
そこで、この記事では
- 宇宙飛行士の平均年収
- 宇宙飛行士の仕事内容
- 宇宙飛行士の手当・福利厚生
- JAXAとNASAの平均年収の違い
- 宇宙飛行士になるための具体的な方法
などをご紹介しています。
ぜひ最後まで見ていってくださいね。
宇宙飛行士の平均年収は863.6万円!
宇宙飛行士の平均年収・初任給
宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)の資料によると、常勤職員の給与は863.6万円(平成30年度)となっています。
このうち、宇宙飛行士にあたる「研究職種」の平均年収は868.8万円です。
出典:JAXA「国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構の役職員の報酬・給与等について」
また、JAXAの「2021年度宇宙飛行士候補者 募集要項」によると、宇宙飛行士の給与は以下のように設定されています。
30歳 | 約32万円 |
35歳 | 約36万円 |
出典:JAXA「2021年度宇宙飛行士候補者 募集要項」
上記以外にも、年1回の昇給、年2回の賞与(ボーナス)、手当、退職金制度などがあります。
「意外と少ない」と感じた方もいるのではないでしょうか?
宇宙飛行士という華のある職業ですが、特段収入が高いとも言えなさそうです。
宇宙飛行士がもらえる手当・福利厚生
宇宙飛行士にも、手当や福利厚生があります。
宇宙飛行士の勤務条件や手当・福利厚生は以下のようになっています。
宇宙飛行士の勤務条件
- 定年:60 歳
- 完全週休 2 日制
- 年末年始(12/29~1/3)
- 年次有給休暇(最大 20 日)
- 勤務時間:9:30~17:45(休憩:午後 12:15 ~13:00)
宇宙飛行士の手当
- 住居手当
- 通勤手当
- 特殊勤務手当
- 超過勤務手当
- 宇宙飛行士手当
宇宙飛行士の福利厚生
- 労災保険
- 雇用保険
- 厚生保険
- 育児休業
- 慶弔休暇
- 介護休業制度
- 産前産後休暇(有給)
- 科学技術企業年金基金
- 科学技術健康保険組合
- ワークライフバランス休暇(7 日)
- フレックスタイム制度、テレワーク勤務制度
- 共済会(従業員と会社がお金を出して福利厚生を運用する仕組み)
出典:JAXA「2021年度宇宙飛行士候補者 募集要項」
また、宇宙飛行士だけあって勤務地は海外にも渡ります。
宇宙飛行士の勤務地について
- 茨城県つくば市(JAXAの筑波宇宙センター)
- アメリカ・ロシア・カナダ などの宇宙機関
このように、特に訓練中は海外滞在も増えることを踏まえると、高い英語力も求められることが分かります。
【国際比較】NASAとJAXAの宇宙飛行士 平均年収の違い
- NASAの宇宙飛行士の収入は政府の給与表に基づいている
- 大体700万円〜1000万円程度
日本の宇宙飛行士の平均年収を国際比較してみました。
JAXAの宇宙飛行士とNASA(アメリカ)の宇宙飛行士の平均年収は以下のようになります。
宇宙開発機構 | 平均年収 |
JAXA | 863.6万円 |
NASA | 約680万円~1050万円 |
NASAの宇宙飛行士の収入は、政府の給与表に基づいています。
給与には15のグレードがあり、それぞれのグレードは能力や経験に基づいてさらに10のステップに分かれています。
NASAの公式サイトによると、宇宙飛行士の収入については以下のような記載があります。
Q. What is an astronaut’s salary?
A. Salaries for civilian Astronaut Candidates are based on the Federal Government’s General Schedule pay scale for grades GS-12 through GS-13. Each person’s grade is determined according to his/her academic achievements and experience. Currently, a GS-12 starts at $65,140 per year and a GS-13 can earn up to $100,701 per year.出典:NASA公式サイト
上記をまとめると、
- グレードは学業成績と経験に応じて決まる。
- 宇宙飛行士の年収は連邦政府の給与表の「GS-12」から「GS-13」
- GS-12 は年間 $65,140(約680万円)、GS-13 は年間$100,701(約1050万円)
宇宙飛行士の給与は「GS-12」から「GS-13」に留まっているわけでなく、能力や経験によってはGS-15の12万ドル(約1300万円)を超えることもできるそうです。
宇宙飛行だけじゃない!宇宙飛行士の仕事内容は?
宇宙飛行士の仕事内容は宇宙飛行に限られません。
ここからはそんな宇宙飛行士の仕事内容について、JAXAの募集要項(2021年度)を参考にしつつご紹介します。
宇宙飛行士の仕事内容
- 訓練業務
- 搭乗業務
- 技術業務
- アウトリーチ業務
上記のうち、「搭乗業務」が宇宙空間での業務で、その他は主に地上での業務になります。
①:訓練業務
厳しい選抜を突破して採用された宇宙飛行士候補者は、以下のような訓練を受けます。
- 航空機操縦訓練
- サバイバル訓練
- 科学・技術の学習
- 英語・ロシア語の学習
- ジェット機による無重力体感訓練 など
こうした身体的にも厳しい訓練を受けたのち、訓練結果の評価によってJAXA宇宙飛行士に認定されます。
その後は、日本、アメリカ、ロシア、カナダなどの宇宙機関で各種システムや操縦方法を学び、訓練を行います。
②:搭乗業務
宇宙飛行士と聞いて一番イメージしやすいのがこの「搭乗業務」という宇宙空間での業務です。
訓練を突破してJAXA宇宙飛行士に認定されると、訓練結果の評価によっては宇宙空間での業務(搭乗業務)に参加できます。
宇宙空間では、国際宇宙ステーション(ISS)で働くことになります。
国際宇宙ステーション(ISS)とは、上空約400kmに浮かぶ宇宙実験施設で、宇宙空間の中で唯一人類が活動する場所です(JAXA「国際宇宙ステーション(ISS)とは」より)。
この「ISS」での業務内容には、以下のようなものがあります。
搭乗業務の例
- 宇宙船外での作業
- 月面での滞在・実験
- ISSシステムの操作・管理
- ISSでの長期滞在(最長6ヶ月)
このような宇宙空間での業務は長くて10年に一度のペースでしか行われません。
そのため、宇宙飛行士は意外にも地上での業務が圧倒的に多いのです。
③:技術業務
宇宙飛行士は、訓練や搭乗業務のほかに「技術業務」というものも行っています。
技術業務とは、科学・技術の知識を生かした専門的な業務を指し、その業務範囲は多岐に渡ります。
技術業務の例
- システム・実験機器の開発
- 運用業務(宇宙飛行士との通信など)
- マネジメント業務(業務管理・方針決定、新人飛行士の育成、チームの取りまとめなど)
④:アウトリーチ業務
アウトリーチとは、「自ら出向いてサービスや情報を提供すること」という意味があります。
その言葉の通り、宇宙飛行士は、宇宙開発に関する情報を広めていく活動に積極的に参加することが求められます。
宇宙飛行士になる方法とは?
宇宙飛行士になるには、JAXAの選抜試験を受け合格する必要があります。
ここからは、その選抜試験とはどのようなものなのかを詳しく解説していきます。
宇宙飛行士の応募資格・選抜方法
応募資格
JAXAは2008年以来13年ぶりに宇宙飛行士の募集を行いましたが、その応募条件が大幅に緩和され、話題になりました。
主な変更点は以下の点です。
応募資格の主な変更点
- 学歴不問に(理系大学卒の廃止)
- 身長制限が緩和(158cm以上→149.5cm以上に)
- 体重制限の撤廃
- 泳力の条件除外
- 自動車免許保有の条件除外
このように、2021年度のJAXA宇宙飛行士の募集は世界初「学歴不問」の募集となりました。
中卒でも、高卒でも、応募資格を満たしていれば応募することができるのです。
泳力や自動車免許保有については、応募資格ではなくなった代わりに選抜合格後にそれぞれ習得する必要があります。
JAXAの募集要項(2021年度)によると、宇宙飛行士の応募資格は以下のようになっています。
宇宙飛行士の応募資格があるもの
- 実務経験:3年以上 (※1)
- 身長:149.5-190.5㎝
- 色覚:正常(石原式による)
- 視力:遠距離視力が両眼とも1.0以上
- 聴力:正常(背後2mの距離で普通の会話可能)
※1 修士号取得者は1年、博士号取得者は3年の実務経験とみなします。
※視力は矯正視力(眼鏡・コンタクトをつけた状態の視力)です。
宇宙飛行士の応募資格がないもの
- 日本国籍を有しない者
- 反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有している者
- 日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこ れに加入した者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者又はその刑の執行猶予の期間中の者その他その執行を受けることがなくなるまでの者
選抜方法
宇宙飛行士の選抜は、書類選抜・第0次選抜〜第三次選抜まであります。
選考内容は、英語試験・小論文・面接試験・プレゼンテーション試験・医学検査・適性検査など様々です。
選考期間は、2021年の12月に募集が始まり、第三次選抜の面接は2023年の2月頃に行われるため、約1年間かけて選抜が行われることになります。
そのため、体力的・精神的強さが必要になる選抜だと言えます。
詳しい選抜内容はJAXAの募集要項(2021年度)の4ページ目をご覧ください。
宇宙飛行士に求められる人物像
JAXAの募集要項(2021年度)では、宇宙飛行士に求める人物像についても書かれています。
簡単にまとめると、以下のようになります。
- 自らの経験を世界中に共有する表現力・発信力を持つもの
- 自らの経験を活用し人類の発展や次世代のために貢献する
- 宇宙空間という特殊な空間でも、柔軟かつ冷静な判断ができる者
- ミッションを成功に導くための協調性とリーダーシップを発揮できる者
宇宙飛行士は宇宙という極限状態で活動するため、いつ何時でも正確な判断力が重要になってくるのです。
【国際比較】宇宙飛行士の合格倍率
宇宙開発機構 | 合格倍率 |
JAXA(日本) | 約320倍(2008年募集) |
NASA(アメリカ) | 約1500倍(2017年募集) |
JAXAとNASAの宇宙飛行士の合格倍率は上のようになっています。
JAXAについては応募者963人に対して合格者は3人で倍率320倍、NASAは応募者18,300人に対して合格者13人で倍率1500倍でした。
2021年度のJAXA宇宙飛行士募集は、応募資格が緩和されたこともあって応募者数が4,127名まで増えており、さらに厳しい戦いになりそうです。
宇宙飛行士は華のある職業だが、身体的な負担も大きい
いかがだったでしょうか?
宇宙飛行士という謎に包まれている職業でしたが、華のある職業とはいえ、その仕事内容は過酷なものでした。
そのため、高収入よりも宇宙開発に興味・関心・やりがいのある方にはおすすめの職業であると言えます。
お金のカタチでは、資格職から宇宙飛行士のような特殊な職業まで、様々な職業の年収事情をお届けしています。
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