通関士の平均年収は584.4万円!仕事内容・国家試験・就職先についても解説!

通関士 平均年収 資格

「通関士って何をやっているの?」

「年収はどれくらいなの?」

「通関士は海外で働ける?」

「弁護士や公認会計士との年収の差は?」

「通関士になるにはどうすればいいの?」

通関士に少しでも興味がある方は、上のような疑問を持ったことがあるかもしれません。

そこでこの記事では、

  • 通関士の仕事内容
  • 通関士の平均年収
  • 他の士業との年収比較
  • 通関士の就職先
  • 通関士になるための具体的な方法
  • 通関士についてよくある質問Q&A

などなど、通関士の気になる情報をたくさんお届けします!

ぜひ最後まで見ていってくださいね。

通関士の仕事内容とは?

通関士の仕事内容を簡単にいうと、「通関のサポート」です。

そもそも、輸出入を行うためには税関を通る(=通関)必要があります。

そこで、税関の審査に引っかからないように、依頼人と税関の仲介人となって提出書類や物品の審査を事前に行うのが通関士の役割なのです。

通関士の独占業務

通関士の独占業務

  1. 通関書類の審査
  2. 通関書類への記名・捺印

通関士には、「通関書類の審査」「通関書類への記名・捺印」という2つの独占業務があります。

独占業務とは、「独占できる業務」のこと、つまり、その職業でしか携われない業務を指します。

通関士の独占業務は、輸出入を行う際に提出する種々の通関書類の内容や形式のチェック(通関書類の審査)を行い、審査の終わった書類に記名・捺印(通関書類への記名・捺印)を行います。

業務①:通関書類の作成・審査

通関士の最も代表的な業務が通関書類の作成・審査です。

輸出入を行うには、通関書類というものを税関に提出する必要があります。

この書類の提出は、輸出入を行う個人や企業が行ってもよいのですが、内容や仕組みが複雑なため、単独で行うことは困難です。

そこで種々の通関書類を代わりに作成したり、内容に不備がないかチェックするのが通関士の役割です。

通関士の審査が必要な書類には、以下のようなものがあります。

  • 輸出入申告書
  • 特例申告書
  • 不服申し立て書
  • 船(機)用品積込申告書
  • 特例輸出入者の承認申請書
  • 修正申告書または更正請求書
  • 蔵入、移入、総保入承認申請書

業務②:関税額の確認と納付

そもそも関税とは、外国から物品を輸入するときに、輸入国に納めなければならない税金を指します。

例えば、アメリカから日本に物品を輸入するときは、日本の税関に関税を納めなければなりません。

このように、輸出入に関係する関税の計算をしたり、実際に税関に納める業務も通関士が行います。

業務③:税関への不服申立て

輸出入の手続きをする中では、税関から依頼人の納得のいかない処分が行われることもあります。

そのような時は、依頼人と税関の間に立ち、通関士が不服申立てを行います。

また、不服申立てに基づいて税関が行う調査に立会い、輸出入手続きが正しく行われていたことを説明・証明するのも通関士が行います。

通関士の平均年収は584.4万円!

通関士 平均年収

厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、通関士を含む「他に分類されない専門的職業従事者」の平均年収は584.4万円となっています。

計算方法は以下のようになっています。

通関士の平均年収

=きまって支給する現金給与額(≒月収)×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額

=381,900円×12ヶ月+1,260,700円

=5,843,500円

ただし、こちらの数値は通関士以外の専門的職業を含むものとなっており、通関士の純粋な年収とは言えません。

そこで、求人ボックスを参照してみると通関士(正社員)の年収は419万円となっています。

→出典:求人ボックス「通関士の仕事の年収・時給・給料

そのため、総合的に見ると通関士の年収幅は400~600万円程度だと推測できます。

国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の平均年収は433万円となっているので、

通関士の平均年収は日本の平均と同じくらい、あるいは上回る程度であると言えます。

ここからは、通関士の平均年収を項目別に見ていきましょう。

【男女別】通関士の平均年収

通関士の男女別の平均年収は以下のようになっています。

約641万円約477.6万円

※出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査
※上記数値は、「きまって支給する現金給与額(≒月収)×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。

通関士の平均年収の男女差は大きく、約160万円となっています

【年代別】通関士の平均年収

年代別の通関士の平均年収は以下のようになっています。

20~24歳約324万円
25~29歳約430万円
30~34歳約496万円
35~39歳約574万円
40~44歳約694万円
45~49歳約706万円
50~54歳約687万円
55~59歳約766万円
60~64歳約516万円
65~69歳約472万円
70歳~約408万円

※出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査
※上記数値は、「きまって支給する現金給与額(≒月収)×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。

通関士の平均年収は、50代後半でピークを迎える結果となっています。

【都道府県別】通関士の平均年収

都道府県別の通関士の平均年収は以下のようになっています。

北海道388.6万円
青森県438.0万円
岩手県438.0万円
宮城県558.1万円
秋田県481.2万円
山形県412.2万円
福島県471.3万円
茨城県543.6万円
栃木県479.7万円
群馬県429.9万円
埼玉県559.2万円
千葉県516.8万円
東京都669.4万円
神奈川県658.1万円
新潟県408.9万円
富山県449.3万円
石川県422.7万円
福井県508.0万円
山梨県560.7万円
長野県441.0万円
岐阜県511.3万円
静岡県512.6万円
愛知県579.5万円
三重県469.6万円
滋賀県598.4万円
京都府602.4万円
大阪府620.1万円
兵庫県496.6万円
奈良県620.1万円
和歌山県380.9万円
鳥取県474.4万円
島根県586.9万円
岡山県495.4万円
広島県574.9万円
山口県582.4万円
徳島県468.2万円
香川県509.8万円
愛媛県557.0万円
高知県504.1万円
福岡県472.7万円
佐賀県419.0万円
長崎県452.1万円
熊本県489.4万円
大分県457.5万円
宮崎県460.5万円
鹿児島県406.2万円
沖縄県449.0万円

※出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査

通関士の平均年収が最も高かったのは東京都の669.4万円、最も低かったのは和歌山県の380.9万円となり、その差は約300万円となりました。

【企業規模別】通関士の平均年収

企業規模別の通関士の平均年収は以下のようになっています。

10~99人100~999人1000人~
495.7万円564.9万円677.5万円

※出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査
※上記数値は、「きまって支給する現金給与額(≒月収)×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。

通関士の平均年収は、企業規模が大きくなるほど高くなっています

【経験年数別】通関士の平均年収

経験年数別の通関士の平均年収は以下のようになっています。

0年1~4年5~9年10~14年15年~
357.5万円435.6万円485.3万円570.5万円719.3万円

※出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査
※上記数値は、「所定ない給与額(≒月収)×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。

通関士の平均年収は、経験年数が長くなるほど徐々に高くなっています

【パート・アルバイト】通関士の平均年収

通関士は、正社員以外にもパート・アルバイトとして働くこともできます。

そこで、正社員とアルバイト・パートで年収を比較してみると、以下のようになりました。

正社員通関士パート・アルバイト
通関士
584.4万円169.1万円

※出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査
※正社員の年収は「きまって支給する現金給与額(≒月収)×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額」で算出。

パート・アルバイト通関士の平均年収の計算方法は以下のようになっています。

厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、通関士の短時間労働者の労働状況は、

平均時給:2011円
1日あたりの平均労働時間:5.3時間
1ヶ月あたりの労働日数:12.7日
年間賞与(ボーナス)等:67,500円

となっているので、

パート・アルバイト通関士の平均年収

=2011円×5.3時間×12.7日×12ヶ月+67500円

=1,691,824円

という結果になりました。

国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の非正規雇用者(アルバイトやパートなど)の平均年収は176万円です。

そのため、パート・アルバイトの通関士として働くと、平均前後のお給料がもらえることが分かります。

ただし、上記は全て平均値なので、実際の収入と大きく異なる場合がございます。

【比較】他の士業との年収の違い

通関士の平均収入を他の士業と比較すると以下のようになりました。

弁護士1191万円
(全国平均)
弁理士945万円
公認会計士・税理士658万円
司法書士独立開業:1000-4999万円
勤務:300-400万円
行政書士584万円
通関士584万円
中小企業診断士500~800万円
社会保険労務士486万円

出典:弁理士・公認会計士・税理士・行政書士・通関士→厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」、社会保険労務士→厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査」、弁護士→日本弁護士連合会の「弁護士白書」、司法書士→日本司法書士会連合会の「司法書士白書2021年度版」、中小企業診断士→中小企業診断協会の「中小企業診断士活動状況アンケート調査

上のデータによると、通関士の平均収入は行政書士中小企業診断士に近いことが分かります。

その他の士業の詳しい年収情報は下のリンクからどうぞ!

通関士の【生涯年収】を日本の平均と比較してみた!

先ほどご紹介した年代別平均年収をもとに、通関士の生涯年収を計算すると、【約2億3000万円】になりました。

生涯年収は、以下のように計算しました。

大学卒業後23歳〜60歳までの38年間働くと仮定すると、

通関士の生涯年収

=324万円×2年間+(430万円+496万円+574万円+694万円+706万円+687万円+766万円)×5年間+516万円×1年間

=2億2929万円

独立行政法人労働政策研究・研修機構が公表している「ユースフル労働統計2021 ―労働統計加工指標集―」によると、

大学・大学院卒業後60歳までフルタイムの正社員を続けた場合、日本の平均的な生涯年収は男性が2億7,000万円、女性が2億2,000万円となっています(退職金を除く)。

上記を踏まえると、通関士の生涯年収は平均程度であると言えます

通関士の主な就職先は?

通関業者

通関業者は、主に国内企業の依頼を受けて輸出入手続き、関税の計算・支払いなどの一連の業務を行います。

通関業者は税関での通関業務に直接関わるため、税関のある空港や港の近くに設置された事務所で働くことが多いです。

商社

商社とは、企業から商品を調達し販売・輸出入を行う会社を指します。

商社で働く通関士は会社と通関業者の間に立ち、通関業者に輸出入の依頼を行う役割を担っています。

通関に関する専門知識を備えた通関士が社内にいると、通関業者とのコミュニケーションが円滑に進むというメリットがあります。

メーカー

メーカーとは、外国から輸入した原材料を加工し、生産した商品を外国に輸出する企業を指します。

商社と同様に、会社と通関業者の間に立って通関業者に輸出入手続きの依頼を行います。

船舶・航空・貿易・倉庫関連の企業

最後に、船舶・航空・貿易・倉庫関連の企業です。

海外から商品を輸入する際、商品は船舶会社の船や航空会社の飛行機を使って運ばれてきて、関税を突破した商品は一旦倉庫会社の倉庫に保管され、その後日本に輸入されます。

船舶・航空・貿易・倉庫関連会社に就職すると、業務の一環として直接通関のサポートを行うことになります。

通関士になるための2つのステップ

ここからは、通関士になるための具体的な方法について解説していきます。

通関士になるためには、以下の3つのステップを踏む必要があります。

  1. 通関士試験に合格する
  2. 就職し、財務大臣から確認を受ける

それでは、1つずつ見ていきましょう。

→参考:財務省「令和4年第56 回通関士試験受験案内

①:通関士試験に合格する

通関士になるためには、通関士試験という国家試験に合格する必要があります。

ここでは、通関士試験について解説します。

試験日程

例年10月上旬に試験が実施され、同年11月にweb上で合格発表が行われます。

試験は休憩含め6時間(9:30~15:30)です。

試験会場

全国13会場
(北海道、新潟県、東京都、宮城県、神奈川県、静岡県、愛知県、大阪県、兵庫県、広島県、福岡県、熊本県、沖縄県)

試験科目

通関業法(45点)

選択式35点・択一式10点

関税法等(60点)

選択式45点・択一式15点

通関実務(45点)

選択式+計算式20点・選択式10点・択一式5点・計算式10点

通関士試験の試験科目は①通関業法(45点)、②関税法等(60点)、③通関実務(45点)の3つに分けられ、全てマークシート式です。

受験資格

学歴、年齢、経歴、国籍の制限はなく、誰でも受験することができます

合格基準

通関士試験の合格基準は合格発表後に行われます。

全体の合格率

過去5年分の通関士の合格率は、13~20%と低めに落ち着いています。

合格率受験者数合格者数
第55回
(令和3年)
15.8%6,961 人1,097 人
第54回
(令和2年)
16.9%6,745 人1,140 人
第53回
(令和元年)
13.7%6,388 人878 人
第52回
(平成30年)
14.6%6,218 人905 人
第51回
(平成29年)
21.3%6,535 人1,392 人

科目免除制度と合格率

通関士試験には、条件を満たせば以下のような科目免除制度を利用することができます。

  • 通関業務を5年以上経験→1科目(通関実務)免除
  • 通関業務を10年以上経験→2科目(通関実務・関税法等)免除

通関業務を5年以上経験している場合は1科目(通関実務)が免除に、通関業務を10年以上経験している場合は2科目(通関実務・関税法等)が免除になります。

令和3年10月3日(日)に行われた第55回通関士試験での、受験科目数ごとの合格率は以下のようになっています。

受験科目数合格率
全科目受験者14.9%
2科目受験者10.6%
1科目受験者59.1%

※税関「第55回通関士試験の結果について

全科目受験者の合格率は14.9%、2科目受験者の合格率は10.6%、1科目受験者の合格率は59.1%となっています。

1科目受験者の合格率は他2つに比べて圧倒的に高く、科目免除制度がアドバンテージになっていると言えます。

ただし、2科目受験者は全科目受験者よりも合格率は低い結果となっており、科目免除者も綿密な対策が必要です。

②:就職し、財務大臣から確認を受ける

通関士試験に合格したら、すぐに通関士として働くことができる訳ではありません。

就職した後、勤務先の方法に従って財務大臣に届け出て、確認を受ける必要があります

通関士試験に合格したということは、あくまで通関士として働くための資格を取得したということであり、実際に働くためには上記のような確認を受けなければならないのです。

また、通関士試験の合格者は、受験地域に関係なくどの地域でも働くことができます。

通関士 よくある質問Q&A

ここからは、通関士に関するQ&Aをご紹介します。

Q1.通関士の就職先は?

A.通関業者・商社・メーカー・船舶会社・航空会社・貿易会社・倉庫会社などがあります。

それぞれの詳しい仕事内容は「通関士の主な就職先は?」という章をご覧ください。

Q2.通関士に学歴は必要?

A.必要ありません。

通関士試験の受験資格はなく、学歴・年齢・経歴・国籍に関係なく通関士になることができます。

Q3.通関士は海外で働ける?

A.勤務先によっては海外駐在があります。

勤務先や出張先の国にもよりますが、通関士は海外でも働くことができます。

海外で通関士として働きたいと考えている方は、通関士試験の対策に加えて語学学習も進めておくと良いでしょう。

海外勤務ができる勤務先は、求人で「海外勤務あり」という条件をつけて検索したり、勤務地を海外にして探してみるのも良いでしょう。

Q4.通関士の平均年収はどれくらい?

A.584.4万円です。

厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、通関士の平均年収は584.4万円となっています。

ただし、求人ボックスによると通関士の平均年収は419万円となっており、年収には幅があると考えられます。

そのため、総合的な年収幅は400~600万円だと言えます。

Q5.通関士の国家試験は難しい?

A.簡単とは言えない。

通関士試験の合格率は10%台です。

8~9割の人は不合格になっているということになり、決して簡単な試験とは言えません。

しかし、科目免除制度利用者(2科目免除)の合格率は全体の合格率よりも高くなっており、制度を利用すれば、通関士になるハードルは低くなります。

まとめ

いかがだったでしょうか?

お金のカタチでは、他にも様々な職業の平均年収や仕事内容をご紹介しています。

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