通訳案内士の平均年収は386.1万円!仕事内容・働き方・国家試験についても解説

通訳案内士 平均年収

皆さんは「通訳案内士」という職業をご存知ですか?

「通訳案内士?何それ?」

「通訳と通訳案内士って何が違うの?」

「通訳案内士の平均年収はどれくらい?」

「通訳案内士になるにはどうしたらいい?」

このように思ったことがある方もいるのではないでしょうか?

そこで、この記事では

  • 通訳案内士の仕事内容
  • 「項目別」通訳案内士の平均年収
  • 通訳案内士の働き方
  • 通訳案内士になるための具体的な方法

などなどを徹底的に解説していきます!

これから通訳案内士を目指したいと思っている方でもそうでない方も、ぜひ最後まで見ていって下さいね。

通訳案内士とは?

通訳案内士の主な仕事は「外国人観光客のサポート」

通訳案内士の主な仕事は、外国語で観光案内をすることです。

具体的には、以下のような業務を行っています。

  • 観光地の下調べ
  • 外国語で観光案内
  • 観光客のホテル予約
  • 旅行のスケジュール管理
  • 空港での出迎え〜見送り

このように、通訳案内士は日本に来た外国人観光客のサポート全般を行っているのです。

全国通訳案内士と地域通訳案内士の違い

通訳案内士には、全国通訳案内士と地域通訳案内士の2種類があります。

これらは、働けるエリア」と「資格制度に違いがあります。

☑︎全国通訳案内士とは

  • 全国で働ける
  • 国家試験に合格する必要がある

☑︎地域通訳案内士とは

  • 登録した都道府県でのみ働ける
  • 各自治体の認定制度に合格する必要がある

全国・地域通訳案内士には上記のような違いがあります。

しかし、2018年の改正通訳案内士法の施行により、現在では資格を持っていなくても有償で通訳ガイドを行うことができます

では、資格を持っている人と持っていない人の違いは一体何でしょうか?

有資格と無資格の違い

有資格ガイドと無資格ガイドの最大の違いは、「通訳案内士を名乗れるか」です。

資格を持っていると、通訳案内士と名乗って働くことができます。

しかし無資格であれば、国や地方自治体の認定を受けていないため、有償で働けるものの通訳案内士やそれと類似する職業を名乗って働くことはできません

通訳案内士と通訳との違い

通訳案内士と通訳との違いを簡単にまとめてみました。

通訳案内士通訳
資格制度ありなし
使う言語(基本的に)外国語外国語と母国語
日本の地理・歴史・文化の知識常に必要必ずしも必要でない
主な仕事観光ガイド他者の言葉を訳す

通訳案内士と通訳は、根本的に仕事の内容が異なります。

通訳案内士は「外国語で観光ガイドをする」のが業務で、基本的に外国語しか使いません。

一方、通訳は「外国語と母国語で話された内容をそれぞれ訳す」のが業務で、母国語から外国語、外国語から母国語への翻訳を両方ともこなす必要があるのです。

ただし、通訳ガイドでも観光施設やレストラン注文時に通訳業務を行うことがあります。

通訳案内士の平均年収は386.1万円!

通訳案内士 平均年収

厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、通訳案内士の平均年収は386.1万円(平均年齢42.3歳)となっています。

国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の平均年収は433万円となっているため、

統計上は通訳案内士の平均年収は日本平均を50万円ほど下回ることになります。

通訳案内士の平均年齢の計算方法は以下をご参照ください。

☑︎通訳案内士の平均年収

=きまって支給する現金給与額(≒月収)×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額(≒ボーナス)

=281,400円×12ヶ月+484,600円

=3,861,400円

【男女別】通訳案内士の平均年収

通訳案内士の男女別の平均年収は以下のようになっています。

434.8万円326.3万円

※出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」
※上記数値は、「きまって支給する現金給与額(≒月収)×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。

通訳案内士の平均年収は男性が434.8万円、女性が326.3万円で、男女差は100万円以上となっています。

【年代別】通訳案内士の平均年収

年代別の通訳案内士の平均年収は以下のようになっています。

20~24歳約283万円
25~29歳約347万円
30~34歳約361万円
35~39歳約392万円
40~44歳約445万円
45~49歳約450万円
50~54歳約458万円
55~59歳約399万円
60~64歳約356万円
65~69歳約271万円
70歳~約238万円

※出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」
※上記数値は、「きまって支給する現金給与額(≒月収)×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。

通訳案内士の平均年収は50歳代前半でピークを迎え、そこから緩やかに下がっていく結果となっています。

【都道府県別】通訳案内士の平均年収

通訳案内士の都道府県別の平均年収は以下のようになっています。

北海道330.4万円
青森県294.4万円
岩手県333.9万円
宮城県339.6万円
秋田県278.3万円
山形県320.9万円
福島県337.7万円
茨城県415.6万円
栃木県355.7万円
群馬県315.7万円
埼玉県377.8万円
千葉県375.8万円
東京都458.1万円
神奈川県378.1万円
新潟県363.1万円
富山県379.6万円
石川県323.5万円
福井県340.8万円
山梨県405.7万円
長野県348.9万円
岐阜県371.7万円
静岡県369.9万円
愛知県419.0万円
三重県362.6万円
滋賀県338.8万円
京都府369.3万円
大阪府388.4万円
兵庫県374.3万円
奈良県334.1万円
和歌山県349.6万円
鳥取県284.6万円
島根県306.4万円
岡山県346.3万円
広島県339.6万円
山口県405.6万円
徳島県278.8万円
香川県381.5万円
愛媛県337.7万円
高知県257.9万円
福岡県341.1万円
佐賀県315.7万円
長崎県277.7万円
熊本県304.9万円
大分県322.0万円
宮崎県261.8万円
鹿児島県308.4万円
沖縄県298.5万円

※出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」
※上記数値は、「きまって支給する現金給与額(≒月収)×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。

通訳案内士の平均年収が最も高いのは東京都の458.1万円、最も低いのは高知県の257.9万円となっており、その差は約200万円ほどとなっています。

【企業規模別】通訳案内士の平均年収

通訳案内士の企業規模別の平均年収は以下のようになっています。

10~99人100~999人1000人~
361.7万円375.2万円422.0万円

※出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」
※上記数値は、「きまって支給する現金給与額(≒月収)×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。

通訳案内士の平均年収は、勤務先の企業規模が大きくなるほど高いという結果になっています。

【経験年数別】通訳案内士の平均年収

通訳案内士の経験年数別の平均年収は以下のようになっています。

0年1~4年5~9年10~14年15年~
279.5万円310.4万円356.4万円379.2万円456.5万円

※出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」
※上記数値は、「所定内給与額(≒月収)×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。

通訳案内士の平均年収は、経験年数を積むほど高くなっています

日本の平均年収は433万円なので、統計上は通訳案内士として15年以上のキャリアを積むと日本の平均程度のお給料をもらえるようになることになります。

通訳案内士の生涯年収

年代別平均年収をもとに、通訳案内士の生涯年収を計算すると約1億5000万円になりました。

計算方法は以下をご参照ください。

大学卒業後23歳〜60歳までの38年間働くと仮定すると、

☑︎通訳案内士の生涯年収

=283万円×2年間+(347万円+361万円+392万円+445万円+450万円+458万円+399万円)×5年間+356万円×1年間

=1億5182万円

独立行政法人労働政策研究・研修機構が公表している「ユースフル労働統計2021 ―労働統計加工指標集―」によると、

大学・大学院卒業後60歳までフルタイムの正社員を続けた場合、日本の平均的な生涯年収は男性が2億7,000万円、女性が2億2,000万円となっています(退職金を除く)。

上記を踏まえると、統計上は通訳案内士の生涯年収は平均を5000万円以上下回ると言えます。

通訳案内士はフリーランスやパートでも働ける

通訳案内士には、働き方に種類があります。

ここでは、フリーランス通訳案内士パート・アルバイト通訳案内士の2つをご紹介します。

①:フリーランス通訳案内士

現在では、独立してフリーランスとして働いている通訳案内士も少なくないです。

フリーランスとして働くことの最大のメリットは、自分のスケジュールに合わせて働ける点1日あたりの収入が高い点にあります。

しかし、フリーランスとして働くとなると、案件の依頼を受けることで仕事を獲得する必要があるため、収入基盤を安定させることは難しいです。

また、通訳案内士の仕事は季節に左右されやすいという特徴もあります。観光シーズンとそうでない時期では受けられる仕事の数も変わってくるのです。

このように、通訳案内士は非常に不安定な職業です。そのため、安定よりも自分の時間を優先したい人に適している職業と言えます。

②:パート・アルバイト通訳案内士

通訳案内士はパート・アルバイトとして働くこともできます。

厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」を参考に、正社員とパート・アルバイトの通訳案内士の平均年収を比較してみました。

正社員パート・アルバイト
386.1万円112.4万円

※出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」
※正社員の平均年収は、「きまって支給する現金給与額(≒月収)×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。

パート・アルバイトとして働く通訳案内士の平均年収は以下のように計算しました。

厚生労働省のデータによると、短時間労働者として働く通訳案内士の労働状況は、

  • 平均時給:1296円
  • 1日あたりの平均労働時間:5.1時間
  • 1ヶ月あたりの労働日数:13.9日
  • 年間賞与(ボーナス)等:21800円 

となっているので、

通訳案内士(パート・アルバイト)の平均年収

=1296円×5.1時間×13.9日×12ヶ月+21800円

=1,124,281円

という結果になりました。

国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の非正規雇用者(アルバイトやパートなど)の平均年収は176万円となっているため、

通訳案内士がパート・アルバイトとして働くと、収入は日本平均を下回る可能性があります

(ただし、上記は全て平均値なので、実際の収入と大きく異なる場合がございます。)

通訳案内士が収入アップするための3つのコツ

①:兼業する

先ほど解説したように、通訳案内士(特にフリーランス)は繁忙期と閑散期で仕事の量に大きな差があります。

そのため、オンライン家庭教師や翻訳など、語学を活かした職業と兼業することによって収入をアップさせるのも一つの方法です。

②:団体に所属する

二つ目のコツとして、通訳案内士の団体に所属するという方法があります。

団体に所属すると、団体内でコミュニティを広げることができ、団体経由で仕事を獲得できる可能性が高まります。

ただし、団体によっては入会費が必要になることもあるため、注意が必要です。

③:旅行会社に所属する

三つ目に、旅行会社に所属するという方法です。

旅行会社の正社員として働くと、フリーランスの通訳案内士とは異なり、定期的に仕事を受注することができます

そのため、収入を安定させることができるだけでなく、コンスタントに実務経験を積むことができるのです。

また、通訳案内士としてある程度の経験を積めば、旅行プランの企画・提案を行うツアーコーディネーターも兼ねて働くという方法もあります。

このように、自分の工夫次第でキャリアアップの選択肢も広がりやすくなります。

資格は必要?通訳案内士になるための2つのステップ

ここからは、通訳案内士になるための具体的な方法を解説していきます。

  1. 「全国通訳案内士試験」に合格する
  2. 各都道府県に登録する

以前は、報酬をもらって通訳案内士として働くためには「通訳案内士」または「地域通訳案内士」という資格が必須でした。

しかし、2018年の改正通訳案内士法の施行により、資格を持たなくても有償で通訳案内士として働くことが可能になりました

ただし、通訳案内の質を保つため、国家資格である「全国通訳案内士」は残っています。

無資格者でも通訳案内士として働くことはできるものの、資格を取ることには以下のようなメリットがあります。

  • 仕事を受けやすい
  • 語学力の証明になる
  • お客さんからの信頼を受けられる
  • 仕事で訪れた施設で優遇を受けられることも…

ここからは、それぞれのステップについて解説していきます。

ステップ①:「全国通訳案内士試験」に合格する

ここでは、全国通訳案内士の概要についてご紹介します。
→参考:日本政府観光局(JNTO)の「2022年度全国通訳案内士試験筆記試験の施行要領

試験概要

全国通訳案内士試験は筆記試験口述試験に分かれています。

例年、筆記試験は8月(11月に合格発表)、口述試験は同年12月(2月に合格発表)に実施されます。

2022年度の試験では、筆記試験が8月21日、口述試験は12月11日です。

試験会場

筆記試験札幌市、仙台市、東京近郊、名古屋市、大阪近郊、広島市、福岡市、沖縄県
口述試験英語・中国語・韓国語 東京近郊、大阪近郊、福岡市
※筆記試験を東京近郊・大阪近郊・福岡市で 受験された方は同一地域
上記以外の外国語東京近郊

二カ国語受験者は、二カ国語ともに同一の受験地・試験会場です。

詳しい試験地は受験年度の試験要項を必ずご確認ください。

受験資格

筆記試験→年齢、性別、学歴、国籍に関係なく、だれでも受験できます

口述試験→筆記試験の合格者・免除者は受験できます。

受験手数料

受験する外国語の数によって受験料は異なります。

【全国通訳案内士の受験手数料】

一カ国語受験:11,700 円

二カ国語受験:23,400 円

支払いは日本円でのみすることができます。

試験科目

【筆記試験】

  • 外国語
  • 日本地理
  • 日本歴史
  • 産業・経済・政治及び文化に関する一般常識
  • 通訳案内の実務

【口述試験】

  • 選択した外国語での通訳案内の実務

※英語、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語、 ポルトガル語、ロシア語、タイ語から選択。

合格基準

2021年度試験では、下のような合格基準がありました。

  • 外国語の筆記試験は、原則として各語学70点が合格基準点。
  • 日本地理、日本歴史は、原則として各科目70点が合格基準点。
  • 一般常識・通訳案内の実務は、原則として30点が合格基準点。(各50点満点)

合格率

全国通訳案内士試験の過去5年の合格率は、以下のようになっています。

実施年度一次合格率二次合格率最終合格率
2021年度19.3%44.4%9.1%
2020年度18.0%48.7%9.6%
2019年度16.0%48.0%8.5%
2018年度23.0%44.7%9.8%
2017年度21.8%63.0%15.6%

全国通訳案内士試験の最終合格率は、例年10%前後となっています。

また、一次試験、二次試験の合格率はともに、年々低下していることが分かります。

お金のカタチでご紹介してきた国家試験の中でも、群を抜いて低い合格率となっています。

その他の国家試験については下のリンクからどうぞ!

ステップ②:各都道府県に登録する

実際に通訳案内士として働くためには、試験合格後に居住地の都道府県知事あてに申請し、登録する必要があります。通訳案内士の登録に期限はありません

外国に住んでいる合格者が登録をする場合、日本に住んでいる代理人を立てて、代理人の住所に登録申請することになります。

登録申請については、各都道府県観光担当部署にお問い合わせください。

通訳案内士の魅力は給料だけではない!

いかがだったでしょうか?

通訳案内士という職業は、必ずしも高収入とは言えないものの、日本の文化・歴史を海外に発信する最前線にいます。

「日本をもっと広めたい!」「国際交流がしたい!」と考えている方には非常に魅力的な職業なのではないでしょうか?

 

お金のカタチでは、通訳案内士の他にも様々な職業の収入事情や仕事内容をご紹介しています。

気になる方は下のリンクからどうぞ!

暮らしに役立つお金の情報を無料でお届けしています!